平壌のニュータウンを訪ねて
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朝鮮滞在42日目。
現在国内の一部地域は観測史上最大規模の干ばつに悩まされている。
つい先日、取材先へ向かう車内ではこんな会話が。
「いや、ほんと見事なくらい雨が降らないねぇ」(現地ガイドのYさん)
「そうですね」(私)
「北部の山間地帯や東海岸ではそれなりに降っているんだけど、なにしろ西海岸の穀倉地帯が…」(Yさん)
「農業省に取材かけてみましょう。地方の農場にも足を運んで」(私)
「わかった。手配してみる」(Yさん)
「それにしても毎日暑い!」(運転手のKさん)
「今日も最高気温30度超えらしいです。でも、日本の暑さに比べたら全然何でもありませんよ」(私)
「日本は暑いうえに湿気も多いって聞くけど」(Kさん)
「ええ、梅雨時から夏場にかけては地獄です。あ、そういえば日本は梅雨入りしたらしいですよ」(私)
「隣同士なんだから、こっちにも雨が降ればいいのに」(Kさん)
「…」(一同)
冗談ではなく、本当に苦笑いが出てきてしまうほど雨が降っていないのだ。こちらに来てから、平壌にまともに雨が降ったといえるのは、自分の記憶が正しければ1日だけ。穀倉地帯の被害は深刻だという。最近では干ばつに加えて、きたる梅雨の時期を前に大雨被害の対策を呼びかける番組がテレビで放映されている。近日中に被害地域の農場を訪ねる予定なので、詳細はあらためて伝えたい。
こういう状況で気が引ける部分がなくはないが、以下、前回の予告どおり平壌市中心部に完成したニュータウン、チャンジョン通りを紹介する。
万寿台地区の一角(具体的には、万寿台議事堂方面から玉流橋に向かう通りと平壌大劇場から千里馬銅像、凱旋門方面に伸びる勝利通りが交差する十字路を中心とした一帯)に全14棟からなる高層アパート群、100店舗を超える商業施設、劇場、学校、公共施設などが新たに建設された。
まずは高層アパート群から。
これが、国内では一番高い45階建てのアパート。
住居の間取りは2LDKから4LDKまでさまざま。広さは最大で145㎡だという。1号棟(4LDK)の内部を見させてもらった。写真ではわかりにくいが、住居スペースはかなり広い。家具なども多くが備え付けだ。
ベランダも広く作られていた。
新住宅には、元々この地域に住んでいた2500世帯あまりを含めた全2784世帯が入居する予定だという。
以前、ここ一帯には低層アパートを中心とした住宅地が広がっていたが、いずれも古い建物ばかり。聞くところによると、朝鮮戦争停戦後のいわゆる「戦後復旧建設」時代に建てられたものもあったとか。建設関係者いわく、元の住民にとっては家の広さがだいたい2倍から2.5倍になるというから、うらやましい限り。
この新築の高層アパートを見て、最初に頭に浮かんだ心配事。それは電力供給のことだ。各棟には国内メーカーのエレベーターが設置されているが、上層階の住人にとってこれが動くか動かないかは生活上の死活問題だろう。取材に同行してくれた関係者にこの疑問を初歩的にぶつけてみたところ、「大丈夫。電力事情が完全に解決されたわけではないですが、現状でもここには優先的に電力が供給されます」とのこと。ここ最近、市内の電力事情は以前に比べてだいぶ改善されたという話を一般市民からも含めてよく聞く。ニュータウンの建設も、首都の電力供給に一定のめどがつくことを前提にしていると思えば当然か。
商業施設はアパートの1階、2階部分や通り沿いに展開されている。
表通りには商店や百貨店、レストラン、喫茶店、裏通りにも大衆浴場やクリーニング店、理髪店などがあった。なかでも、黒いガラス貼りの複合商業施設が目を引く(最近、市内には外装が全面色付きガラス貼りで周囲の風景を反射する建物が多いが、流行りなのだろうか。)。
歩道の幅は広く、舗装もしっかりしている。また、新たに地下街もできて、お店や駐車場が整備されていた。個人的な感想を言えば、ショーウインドーやオープンテラスつきの施設もあったほうがより華やかになると思うのだが…。
ほかにも、劇場が新設され、地域の小学校や幼稚園、託児所の建物も新しくなるなど、街全体が生まれ変わった印象だ。
建造物がある程度の間隔を空けて建っているので、実際の敷地面積よりも広く感じる。
首都・平壌の建設は綿密かつ高度な都市計画のもとで進められていると聞いたことがある。今回のチャンジョン通りの建設はその最たるものなのかもしれない。自分としては、荘厳美、崇高美を誇る「大記念碑的創造物」や絢爛華麗なつくりの現代的な施設、そしてチャンジョン通りのようなある意味ハイパーモダンな都市空間と、昔ながらの建物や風景、人々の生活の息づかいが聞こえるような街並みが混在する姿に、平壌という都市の特徴が表れていると思う。(相)
(相)さんのブログ
いつも拝見しています。
(相)さんのブログからは、平壌取材において感じていらっしゃる「違和感」のようなものを、言葉を慎重に選びながら、「規則」の範囲内で表現されているのがよく伝わります。勿論日本で生まれ育った(相)さんにとっては、不思議な事が多いでしょう。よく理解できます。
ところで平壌のビルの反射するガラス窓とか、建物のデザインとかは、ほぼほぼ中国の踏襲ですね。中国の建設会社が入ってるのかもしれない。これからどんどん影響力は高まる一方でしょうね。
発展してますね!
随分と変わりましたね~、平壌。4年くらい前に、イタリア料理店がオープンして、その後続々と、フライドチキンの店、ハンバーガーの店などがオープンしました。徐々に改革開放していくつもりなんでしょうか。改革開放された暁には、僕の大好きなポチョンボ電子楽団の日本公演、またやって欲しいなぁ。