結婚特集を組みながら
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「結ばれた人は誰ですか?」
こんなタイトルをつけた特集を組んだのは2005年4月のことです。国際結婚、とくに日本人と結ばれた同胞を本格的に取材したのは初めてことでした。
今でも忘れないのは、ある同胞女性が日本人との結婚を打ち明けた時に父が激怒し、怒り狂ったという話。その怒りに、2世と3世の間にある「日本人観」の圧倒的な差を見せつけられた気がして、しばらくの間、放心状態でした。その女性は結婚後、試行錯誤をしながら、わが子を民族学校に通わせています。
本来なら、一緒にいたいと思った人と結婚するのは自然なことで、そこに民族や国籍の問題を介在させることはナンセンスだという意見も聞こえます。人柄と国籍のどっちを取るんだと聞かれれば、私ももちろん人柄と答えます。しかし、取材したコリアンの結婚からは、個人の価値観だけではなく、家族のあり方、異文化理解、同胞や日本社会の成熟度など、さまざまなテーマが浮かび上がってきました。
「1世が同胞と結婚することを強く望んだのは、朝鮮人が排斥され、無権利を強いられる中、権利獲得のために闘い、その過程で信じられるのは自分たちだけだということを、体験を通じて感じたからだった」という2世の言葉にも触れ、「結婚はコミュニティの存続のために必要という考えと、結婚はあくまでもプライベートな問題で両性の合意と平等によってのみ成立する、という考え方のギャップ」が世代間に存在することも痛感しました。
各地を歩きながら強く感じたことは、一時、不幸な歴史を抱えた日本と朝鮮にルーツを持った人間同士が結ばれ、「家庭」というコミュニティを多く築いている現状の中、この無数の「家庭」こそが「和解」を導く空間になりえるのではないか、ということでした。
決して、国際結婚を奨励しているのではありません。同胞が出身、所属、国籍、考え方など、さまざまな事情で断絶されている中、同胞との出会いを求める人たちに、出会いの場を提供する努力は引き続き必要だと感じます。その一方で、日本人と結婚したカップル、そのカップルの間に生まれた子どもたちをどう受け止めていくのかも、同胞社会の大きな宿題だと感じました。今も同じ気持ちです。
今は「朝鮮・韓国」籍を持つ同胞のうち、5人に4人が日本国籍者と結婚しています。
民族国籍を持つ同胞同士の結婚は、1960年代は70%台、84年からは日本国籍者との結婚が50%を上回るようになりました。89、90年には日本国籍者と結婚する同胞が1万人に達し、95年には全体の70%を超え、2000年代には80%を超えています。2010年の統計では民族国籍者同士で結婚している人は全体で17.04%です。すでに日本国籍を取得した同胞やその子どもたちがどういう人たちと結婚したのかは、この数字に含まれないので、もっと多くの家族の姿があるでしょう。
同胞の皆さんが、どんな人とどこで出会い、縁をむすび、家庭を築いているのか。丹念に見ていきたいと思っています。(瑛)