外国人は煮て食おうと焼いて食おうと?
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7月9日に新しい在留管理制度がスタートして約4ヵ月が過ぎた。大きな問題となっているのは、正規の在留資格をもたない非正規滞在者といわれる外国人の生活や人権が蹂躙されることだ。
日本には特別永住者・中長期在留者のように正規の在留資格をもっている外国人だけが暮らしているのではない。非正規滞在者が数多く住んでいる。超過滞在者(オーバーステイ状態の人たち)や仮放免者たちで、超過滞在者だけでその数は現在6万7000人にのぼると見られている。
以前はすべての外国人に外国人登録証明書が交付されていたが、非正規滞在者には外登証の代わりとなる在留カードも外国人住民票も与えられない。「身分を証明するものがない」ということから、それでも以前は受けることができていた様々な行政・民間のサービスからはじき出されるのではないかとの懸念が、新制度施行前から出ていた。
とある専門家は、「非正規滞在者は公的な身分証明のない『法外の存在』『存在しないもの』とされたということ。できるかどうかは別としても、日本政府は非正規滞在者を0にすることを目指している。非正規滞在者の生活はますます困難になり、今後、社会の表に出てくることが難しくなっていくだろう」と語っていた。
日本政府が在日外国人に対する管理を強化し非正規滞在者を減らすために本腰を入れ始めたのは2003年以降だ。理由としたのは「テロ対策」である。
03年12月に非正規滞在者の半減計画をスタートさせ、
・旅館業者による外国人宿泊客の本人確認の強化(05年4月)
・航空機・船舶等運送業者に対する乗客の旅券確認の義務化(05年)
・ICパスポートの導入(06年実施)
・事前旅客情報システム導入(07年2月、外国からの航空機・船舶が日本に到着する前に会社から旅客・乗員情報の提供を受け警察庁・法務省・財務省のデータベースと照合する)
・日本版US-VISIT導入(07年実施、入国時に顔画像・指紋情報により個人を識別する)
・外国人雇用状況届出の義務化(07年)
などの強化策を進めてきた。
新在留管理制度の実施はこれらの管理強化の流れのなかにある。
2000年に25万人以上いた超過滞在者は、現在約6万7000人までに減った。減少した数の半分は日本国外へと出て行き、半分には在留許可を与えたという。「在留許可を与えられる外国人にはもうすでに与えており、今後はほとんど与えられないのではないか」とある人は言いながら、「こんなことができるのは日本だけ。日本は外国人の管理を徹底してできる唯一の国ではないか」と皮肉を込めて語っていた。
ではどうやって25万人から6万7000人まで減らしたのか。
一つは、上述したように、入り口での取り締まりを強化し日本にとって「都合の悪い外国人」を入国させないようにすること。
もう一つは超過滞在者などに対する徹底した「摘発」だ。駅前や新幹線の入り口に警官が立ち、欧米人でない外国人がいると声をかけて在留資格などをチェックする。教会の近くの駅や外国人が住んでいたり住んでいたアパートなど、集まる可能性がある場所を電子地図上に記録していき、「摘発」の能率を上げるということもしているという。今年6月には、警官が教会の敷地内に乗り込み、そこにいた非正規滞在者を連行していくというとんでもない事件も起きた。そういううわさはいっせいに広まり、その後、非正規滞在者は教会に近づかなくなったそうだ。
関係者は、「今後も摘発の手は緩めないだろう」と言う。「摘発」のために相当な人員を動員しており、「壮大な税金の無駄遣い」だとも指摘する。
バブルなど日本が景気がいいとき、労働力不足から多くの外国人を引き入れた。外国人たちは主に日本人が嫌がるきつい仕事に従事し、日本経済の発展のために大きく貢献したのだ。そのときは、日本政府は外国人の在留資格についてうるさく言わなかったが、不況となるや今度はどんどんと日本から追い出そうとする。
管理強化の中で、特に非正規滞在者の外国人は、強制退去になったり入管に収容されたりし、生活そのものを破壊され家族がばらばらになるなどの悲劇が起きている。日本政府に外国人の人権を守ろうという発想はなく、あくまで管理・監視の対象であり、日本にとって「利益」となるかならないかでしか判断しない。
同じ日本にいる外国人でも、米軍兵士と非正規滞在者では天と地の差がある。
このような日本政府の政策が、社会全体の排外主義を助長しているのではないか。朝鮮学校に対する補助金のカット、「高校無償化」からの排除もそうだが、生活保護をはじめとする福祉制度から外国人を排除しろという主張が、ネット上で多く見られるようになった。
「日本人の血税を外国人のために使うことは許されない」という物言いをよく目にするが、外国人も収入があればきちんと税金を払っている。それは行政サービスからはじかれようとしている非正規滞在者も同じだ。(k)