朝鮮のスイーツ
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2013年の新年号では、ウリ料理研究家の安玉順さんの手引きを受け、「朝鮮のスイーツ」を紹介しました。朝鮮のスイーツといえば、読者の皆さんは何を連想されますか? 今流行りのパクピンス、ホットクでしょうか。
朝鮮半島に伝わる伝統菓子は、お餅だけでも200種類以上を超えるといいます。1月号では、蒸して作るシルトク(ペクソルギ、写真)、こねて作るソンピョン、搗いて作るインジョルミ、ゆでで作るトクスダン、焼いて作るファジョン―といった5種類のお餅を、伝統菓子はタシク、カンジョン、ペスクを紹介しました。
例えばお祝いの席を飾るシルトクですが、蒸し器を用意して、材料は米粉、グラニュー糖、塩、水のみ! もちろん、水かげんや蒸し加減が難しいところですが、安先生のそばで見ていると、「私にもできるかも?」という気持ち(錯覚?)が沸いてきました。そういえば中学のときにお菓子作りに一時熱中したこともありました…。
今回、感動を覚えたのは朝鮮半島に伝わる伝統菓子の豊かさです。お餅ひとつをとっても、朝鮮では、もち米粉、うるち米粉はもちろん、それらを混ぜたり、アワやヒエなどの雑穀、カボチャやトウモロコシなど季節の野菜も素材にしたそうです。
文献を読んでいくと、朝鮮時代から宮廷だけではなく、庶民たちもお菓子を楽しむようになったという記述もありました。お米を揚げて作るカンジョンというお菓子については、庶民の中で、米が跳ね上がる高さを競った遊びもあったといいます。おなじみのソンピョンは、チュソク(秋夕)だけでなく、陰暦2月1日のイルクンナル(일군날)にも食されたとか。この日、農民は小豆で作ったソンピョンを食べ、一年の農業の始まりといえるパッカリ(밭갈이:畑を耕すこと)に精を出したといいます。
日本にも十五夜にはお団子、七五三では千歳飴…といった楽しみ方がありますが、朝鮮半島にも季節や行事ごとに美味しい料理やお菓子が登場します。いつの時代も、美味しいものは人々を楽しませてくれますよね。
他にも、ソンピョンはソウルでは小さく作り(品よく、ということでしょうか)、そのほかの地方では大きく作るという話も興味深かったです。とにかく、お菓子の種類が多いのは、地方ごとに味わい方や楽しみ方が違ったからだと感じました。
朝鮮のお菓子といえば、8年前、息子の백날맞이(生まれて100日のお祝い)のときにシオモニが差し入れてくれたシルトクの美味しさにビックリしたことがあります。そのシルトクとは、川崎桜本にある朝鮮惣菜屋「安本商店」のもので、小豆入りのシルトクは、できたてで温かく、甘さも絶妙でした。
何でも買える時代ですが、手作り、作りたての美味しさにはかないませんよね。
来週に刷り上る予定の新年号の「朝鮮のスイーツ」レシピで、クリスマスケーキならぬ、クリスマスシルトクはいかがでしょうか?(瑛)