長生炭鉱水没事故の追悼文と在特会の「嫌韓デモ」
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今日も先週に引き続き、長生炭鉱水没事故犠牲者追悼碑について書きたいと思います。(先週のブログ「長生炭鉱水没事故と遺族のクンジョルhttp://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/5ffd8d2b3ffc2206600bf74ff8f1db6d)
先週のブログで、追悼碑建設を中心になって進めてきたのは日本の市民団体である「長生炭鉱の“水非常”を歴史に刻む会」だったこと、会の活動目標の一つが追悼碑建立だったことを書きました。また、ただの追悼碑でなく、日本人としての反省を込めた碑文と全犠牲者の名を刻んだ追悼碑を建立すると明確にしていました。
追悼碑の後ろには、刻む会と韓国の遺族会の追悼文がそれぞれ掲げられています。追悼文の全文というのは、新聞や雑誌にはスペースの関係でなかなか紹介されないので、以下に刻む会の追悼文を全文紹介したいと思います。
「一九四二年二月三日早朝、ここ西岐波の浜辺にあった長生炭鉱で、「水非常」(水没事故)が起き、一八三名もの人々が生きながら、坑道に封じ込められてしまいました。
アジア・太平洋戦争に突入した日本は、国策として、石炭の増産を強く推し進めたのです。それは漏水を繰り返していた危険な長生炭鉱も例外ではありませんでした。
犠牲者のうち一三六名は、日本の植民地政策のために土地・財産などを失い、やむなく日本に仕事を求めて渡ってきたり、あるいは労働力として強制的に連行されてきた朝鮮人だったのです。
また、日本人四七名も、多くの戦災者と同様、戦時中の混乱の中でかえりみられませんでした。 無念の死を遂げ、今もなお目の前の二本のピーヤの底深く眠っている人々に、つつしんで哀悼の意を捧げます。
とりわけ、朝鮮人とその遺族にたいしては、日本人として心からおわびいたします。
私たちは、このような悲劇を生んだ日本の歴史を反省し、再び他民族を踏みつけにするような暴虐な権力の出現を許さないために、力の限り尽くすことを誓い、ここに犠牲者の名を刻みます。」
読めばわかりますが、この追悼文には、なぜ朝鮮人が犠牲になったのかという根本原因と責任の所在、日本人としての反省と謝罪、2度と同じことを繰り返さないという決意が込められています。これだけ明快な追悼文も珍しい。
2011年7月に、このブログで「松本龍復興担当相の辞任と朝鮮人強制連行犠牲者の碑」という文章を書きました。 http://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/88dd96e2328cbf698dbdf824668babc7
群馬県高崎市にある県立・群馬の森という公園にある「記憶、反省そして友好」という名称の碑を紹介したもので、碑は同じく、強制連行・強制労働によって群馬県で犠牲になった朝鮮人を追悼するためのものです。しかし、碑が県の施設内に建てられたため、碑文が県と日本政府の圧力によって、建立を進めた日本人の思いからかけ離れたものにされてしまったことを報告しました。
長生炭鉱の追悼碑を建てるにあたり、刻む会と遺族会は主に宇部市に建立への協力を何度も要請してきたといいます。そのために市との協議会も10回以上持ったそうですが、最終的に市の回答は「協力できない」というものでした。追悼碑も本当は、炭鉱跡に近いところに建立したかったそうで、市の土地を購入したいと持ちかけたけれど、それも拒否されたといいいます。
取材の際に、刻む会のメンバーが次のようなことを皮肉を込めて語っていました。「市がまったく協力しなかったから、逆に追悼文の内容を100パーセント刻む会の思いで作ることができた。市が協力していたら、追悼文の内容に干渉してきたことだろう」
群馬県高崎市と山口県宇部市の二つの碑に対する日本政府や行政の対応を見ていると暗澹たる気持ちにさせらます。 国家犯罪の過去を反省せずきちんとした謝罪も行わない、過去を後世に伝えようという市民の運動には協力しない、関与すれば謝罪や反省、責任を隠そうと圧力をかける…。
2月9日の土曜日、新宿・新大久保のコリアンタウンで在特会による「嫌韓デモ」が行われました。私は現場にいたわけではないですが、ネットであげられた報告や写真をみると、「朝鮮人首吊レ 毒飲メ 飛ビ降リロ」「良い韓国人も 悪い韓国人も どちらも殺せ」と書かれたプラカードが掲げられ、朝鮮人に対するヘイトスピーチが撒き散らされていました。警察はただ見守るだけでもちろん逮捕するわけでもなく、マスコミも大きく取り上げません。そのような行動をする人びとも問題ですが、それを問題視することなく逆に許容する、日本社会はここまで危険な社会になっています。
日本政府が朝鮮学校だけを「高校無償化」から除外していること、それを良しとする世論があることも、すべて地続きの問題だと言えるでしょう。
結局は、日本が他国を侵略したり植民地支配した過去を清算しなかったことが根底にあります。根本的には過去に犯罪を犯した国の体制がそのまま続いて今日の日本社会に至っているというのが本当のところでしょうか。
しかし、今回の取材では、同時に、20年以上にわたり粘り強く追悼碑建立のために運動を続けてきた刻む会の人たちの姿に希望を得ることができました。希望を胸にがんばる、と思えるそんな出会いがある。ネットの上だけで主張するだけでなく、刻む会の人たちのように具体的に行動しないと、世の中は少しも良くならないということだと思います。(k)
Unknown
侮辱罪や名誉毀損罪は親告罪なので、ヘイトスピーチだけでは警察は逮捕しません。
彼らの逮捕を望むなら侮辱罪で告訴したほうがいいですよ。