行政が差別と排除を率先垂範する日本
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東京の町田市教育委員会が、同市内の小学校の生徒に配付している防犯ブザーを、朝鮮民主主義人民共和国をめぐる最近の情勢にかんがみて朝鮮学校の生徒には貸与しないことを決めた、というニュースが一昨日から昨日にかけて、私も利用しているSNS上を駆け巡った。
にわかには信じられなかったが、本当のことなのだ。リンク先は昨晩配信された共同通信のニュース。
http://www.47news.jp/CN/201304/CN2013040401002358.html
詳しい事情を知るために、昨日の夕方、同委員会の学校教育部教育総務課に問い合わせの電話を入れてみた。対応した職員によると、この件に関して「本日から多数の問い合わせ、抗議の電話をいただいている。意見を重く受けとめ、現在、今後の対応を協議している」とのこと。不貸与の決定についてあらためて検討しているが、再考の結果、決定が撤回されるかもしれないし、されないかもしれない、現時点ではこれ以上何も言えない、という返答だった。
同職員によると、防犯ブザーの配布は2004年から始まった。市立小学校に通う1年生には無条件で、私学の場合は要望があれば貸し出している。朝鮮学校から要望を受けて貸与した前例もあるという。自明のことだとは思いつつ、一応、貸与の際に条件や審査などがあるのか問いただしたが、そんなものはないという答えだった。今年3月の時点で朝鮮学校側から貸与の要望があったが、「ミサイル発射」(人工衛星打ち上げ)など「北朝鮮をめぐる最近の情勢を総合的に判断」し、教育委員会が不貸与の決定を下し、朝鮮学校側に伝えたという。
町田市教育委員会がこのような決定を下した背景には、昨今の「国民の理解」や「県民感情」といったものを口実にした「高校無償化」からの朝鮮学校排除や地方自治体の補助金不支給の動きがあるのは間違いない。そして、たぶん同市教育委は今回の決定を間違ったことだと思っていないのだろう。「北朝鮮と繋がりのある学校に通う子どもたちの安全に配慮する必要はない、市民感情が許さない」―信じがたいことだが、そう考えるしかない。
すでに他でも指摘されていることだが、昨今の「北朝鮮をめぐる情勢」、とくに社会に蔓延する反朝鮮感情や在特会などの差別、排外主義者らによるヘイトスピーチなどの不穏な雰囲気をかんがみるならば、真っ先に朝鮮学校の生徒の身辺安全に万全を期すのが行政の役目だと思うのだが、これでは真逆だろう。同市にある西東京朝鮮第2初級学校は小さな学校で、新1年生の数も決して多くはない。防犯ブザーを自前で用意するのは難しいことではないが、だからといって看過できる問題ではない。
今回何よりも恐ろしく思ったのは、地域の学校に通う子どもたちの安全(それがどんな学校であれ)といった社会の根幹に関わる部分においてさえ特定の対象を差別し、排除しようとする行政の姿勢だ。「たかが防犯ブザー」と思うかもしれないが、子どもの生命と安全に関わる事柄に行政が公然と、率先して差をつけたのが今回の町田市教育委の決定だといえる。「北朝鮮情勢をめぐる○○感情」の名の下に、他の分野でもさらなる差別と排除が進むのではないか、そんな危惧を抱かざるを得ない。
朝鮮学校が朝鮮民主主義人民共和国と関係があろうとなかろうと、このような差別的な仕打ちが許されていいはずはない。今回、被害者が小学校の児童ということで問題の深刻さが浮き彫りになったが、大人に対する場合であっても許されるものではない。(相)
人権意識の低さ
決めたのは教育委員会の課長であって、教育長でも教育委員会の議決でもありません。
「市民感情」も調査していないし、仮に圧倒的多数の町田市民の意見だとしても権利は守らなければなりません。これではリンチを認めるのと同じです。
詳細は省略しますが、日本の人権教育が表面的なものであること、日本の歴史教育が大事なことを教えていないことがはっきりと表れました。
これで日本の国際的な評価はまた低下します。
Unknown
こういった行政の過ちが、然るべき国際機関に持ち上げられることはないのですか?
Unknown
野村様、コメントありがとうございます。「『市民感情』も調査していないし、仮に圧倒的多数の町田市民の意見だとしても権利は守らなければなりません。これではリンチを認めるのと同じです」<まさにおっしゃる通りだと思います。
Unknown
pomi様、今回は国内メディアも迅速に報道していますし、抗議の声も多数寄せられてるといいます。自動的に持ち上げられることはないので、こちらのアピール次第でしょうか。
お返事ありがとうございます
そうだったのですね。情報から遅れていてすみません。でも安心しました。外圧をかけられて渋々、ではなく国内で問題提起されて欲しいです。
あと、福島の朝鮮学校は除染の対象から外されていて、在日の有志の方々が危険をかえりみず作業にあたって下さっていたことも知りませんでした。報道もされていなかった気がします。