(麗)のオススメ漫画02
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今日は(需要があるかわかりませんが)オススメ漫画第二弾です。
今回は、くすりと笑えてちょっぴり泣ける漫画、「俺はまだ本気出してないだけ」(IKKI COMICS/青野春秋/全5巻)をご紹介いたします。
私はこのタイトルに妙に惹かれ、購入してしまいました。コメディ漫画ですが、心がじんわりする作品です。
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あらすじ
主人公は、高校生の娘と父親との3人暮らしの40歳の中年サラリーマン、大黒シズオ。
なりゆきで就職し、なんとなく15年働いた会社を勢いで辞めたものの、朝からゲームをしたり近所をウロウロしたりで、自分を失うこと一ヵ月が過ぎたある日、シズオは突然、「俺、漫画家になるわ」と家族に言い出す。
そんな彼の無謀なまでの決意に、娘はただ微笑み、父親は呆れて号泣してしまうのだがー。
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この作品は絵のタッチがかなりゆるーく描かれており、物語もゆるーく進行して行きます。表紙でもわかるように、小太りで髭の生えた中年おじさんのシズオ(40)は、バイト先でも二回りも年下の後輩に見た目が「店長っぽい」からと「店長」というあだ名でイジられ、娘にお金を貸してもらおうとする「ダメ親父」丸出しの男。ですが、根は優しく友達思いな性格でどこか憎めない。絵のタッチも影響してかそれは愛らしいほど。
会社を辞めてまで目指すと言った漫画は、宣言通り、本当に描き始めます。
シズオは初めて描いた漫画を出版社に持ち込みますが、結果はボツ。それでも悲観的にならず、むしろ創作意欲が次々と湧いていき、どんどん新作を持ち込み続ける。そう、彼はどこまでも「本気」なのです。そこが、このどうしようもないキャラクターの愛すべき所なのだなと思います。
突然、漫画家を目指したところで夢のデビューなんてものはほど遠く、トントン拍子でうまいこと進むサクセススト-リーでもない。
「人生そんなに甘くない」という現実がひしひしと伝わってくるのもこの作品の良いところです。
また、自由に我が道を行くシズオと、彼に振り回される家族、そしてシズオと子どもの頃からの付き合いのバツイチ子持ちの「宮田」、無口で無表情のヤンキー「秀一」、シズオの漫画を担当する編集者「村上」などの登場人物たちが抱える「闇」を淡々と描いているのもこの作品の魅力です。
果たしてシズオは、夢の漫画家デビューを成し遂げることが出来るのか…!?
主人公のどうしようもないほどの楽観的な思考とゆっくりと進む日常にくすりと笑え、登場人物たちの哀愁漂う現実的な物語にちょっぴり泣け、全巻読み終わると、なんだか心がほっこりする、そんな作品です。
ちなみにこの作品、なんと堤真一主演で映画化されます。笑
公開は6月15日です。私も楽しみです。(麗)
Unknown
うわ~きたわ~w まさかのチョイスとしか言いようがない。
>会社を勢いで辞めたものの、朝からゲームをしたり近所をウロウロしたりで、自分を失うこと一ヵ月が過ぎたある日、シズオは突然、「俺、漫画家になるわ」と家族に言い出す
このご時勢でこういう設定を現実に置き換えてみると、この設定、とても笑っていられないものがあります(しかもタイトルがまた…)。高校生の娘がいるシングルファーザーで年老いた父親を背負ってなおかつ無職! そんな主人公を前に読者がとるべき態度は、自分の年齢や雇用状況、家庭状況によってかなり変わってくるでしょう。
私としてはこの作品は、主人公・シズオと同じか近い生活状況にある読者が、イタイ自虐に浸りながら読む(言い換えれば、乾きかけのカサブタを自分でイテテとはぎとりながら泣き笑いするような…)ところに醍醐味を見いだすのが、真に正しい受容態度ではないかと思っていますw ねじれた話ですが、それが読み手にとっていわゆる「癒し」につながるわけです。
というわけで(麗)さん。この作品が示す
>「人生そんなに甘くない」という現実
というものは、若い人がマンガで味わうにはまだ少ーーーし早い「大人のペーソス」ではないかと私は思うのです(掲載誌の月刊IKKIって、どちらかといえばサブカルチャー寄りの大人が読むマンガ誌ですし)。
オタクのおっさんとしては、僭越ながら「ちょっとキミにはまだ早いんじゃねーの?」と感じられてしまう一作ですね。
Unknown
オタトンポ様
いつもコメントありがとうございます。
私、この作品のタイトルの妙に惹かれて購入したわけですが、オタトンポ様のご指摘通り、確かに私にはまだ早いですね…。笑
40歳男性の哀しい自虐話を読んで「シズオ頑張れ」なんて思いながら読んでましたが、これがもし自分の父親だったらと思うと頭抱えますね…。笑
あと、個人的にはシズオの周りの登場人物たちがどれもいちいちリアルで、胸が痛い話ばかりで、シズオはその緩和剤みたいな役割で助かってました。笑
シズオの娘の話や友人の宮田の話なんかとくに、胸が痛いです。
これって作者の知人のことを描いてるのか~?とか思ってみたり。
もうちょっと大人になってから読み返してみると、また違った角度で見られる作品なのかもしれませんね。^^
失礼いたしました
(麗)さん、スゴハシムニダ。
自分のコメントを改めて読んでみて、「キミにはまだ早い」は言い過ぎだったかなとやや反省しております(白い犬のお父さんみたいなセリフだ)。
ただ、(麗)さんの記事を一読したとき、(麗)さん自身もおっしゃる本作の「闇」の部分を、どことなくやりすごして「ダメ男のちょっと笑えるダメダメ話」(たとえば「○めんずうぉ~か~」みたいな)としてのみ捉える批評になってはいないか、と気になってしまったのです。シズオの娘の行く末など、あの作風でなければ「これ重すぎるわ~」な展開ですし。
というわけで、曲がりなりにも数年間社会人としてメシを食ってきた(麗)さんであれば、「読むには早い作品」ということもないと思います。出過ぎた発言、申し訳ございませんでした。
ちなみにこの作者調べてみると、最近短編作品「五反田物語」をビッグコミックスピリッツ誌上で集中連載にて発表しております(コミックス化もされていますね)。実は私もそれとは知らずその作品の1編を立ち読みしていたことを、調べるうちに思い出しました。方向性は「俺はまだ本気出してないだけ」と同じ感じ。いい話でした。3回くらい読み返しましたかね。作者が優れた漫画家であるのは、確かに(麗)さんのおっしゃるとおりのようです。
Unknown
オタトンポ様
全然、過ぎた発言じゃないです。漫画の紹介って難しいですね…。私ももう少しじっくりと読み返して丁寧に書くべきでした^^;
「五反田物語」ですか~! すでに興味深々なので買ってみます。
ご紹介ありがとう
さっそくDMMでレンタルして読んでみました。
1~4巻は爆笑に次ぐ爆笑、
そして5巻の成熟と静謐には襟を正してしまいました。
素敵なマンガを紹介してくれてホントにありがとう。
この作品にはずるい人間も、意地悪な人間も出てこない。
権力を求めようとする人は誰一人いない。
大げさに言えばディストピア的状況に、
ユートピア的キャラクターが存在できるのかという実験のような作品です。
実験は成功、シズオも、秀一もきちんと生きている。
(麗)さんはシズオの娘さんに身をおいて読んだのかも知れませんね。
Unknown
むさしねこ様
コメントありがとうございます。
紹介した作品を読んでいただいてとても嬉しいです!^^
ギャクにもシリアスにも適応する「真似できそうで真似できない」作者の画風もとても気に入っています。
娘の鈴子が壮絶なイジメに耐えるなかで、唯一、支えになっていた友達の「残酷な一言」が、特に胸を抉られましたね…。
映画もどのように描かれるな期待大です^^
Unknown
はじめまして 遅ればせながら最終巻を読みました。
ラストは娘の話で括られていましたが
イジメの話を聞いてると
なんか今の時代リアルにありそうで、ちょっと怖くなりましたね。
(ひょっとしたら誰かの実体験!?)
後半のインパクトが強すぎて 前半シズオ達の話がかなり飛びましたw
良い意味で心に残る漫画だったと思います。
Unknown
トミー様
はじめまして、コメントありがとうございます。
確かに後半のあの重さを読むと、前半の話は吹っ飛びますよねw
話がリアルな分、心が千切れそうになりますが、
シズオの存在がそれを和らげてくれるので、読んでいるこちらも救われます。
シズオに癒されたい時にのんびり読んでいます。^^