橋下氏を日本社会は引きずりおろせるのか
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昨日の日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市市長)の日本軍「慰安婦」制度などに対する発言が問題となっている。報道によると次のような発言を行った。
「銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で命をかけて走っていくときに、精神的にも高ぶっている猛者集団をどこかで休息させてあげようと思ったら、慰安婦制度は必要なのは誰だってわかる」
「当時の歴史を調べたら、日本国軍だけでなく、いろんな軍で(慰安婦を)活用していた」
「なぜ日本の慰安婦だけが世界的に取り上げられるのか。日本は国をあげて強制的に慰安婦を拉致し、職業に就かせたと世界は非難している。だが、2007年の(第1次安倍内閣の)閣議決定では、そういう証拠がないとなっている」
「事実と違うことで日本国が不当に侮辱を受けていることにはしっかり主張しなければいけない」
「学術上、(侵略の)定義がないのは安倍首相が言われているとおり」
「慰安婦制度じゃなくても風俗業は必要だと思う。(米軍の司令官には)『法律の範囲内で認められている中で、性的なエネルギーを合法的に解消できる場所は日本にあるわけだから、もっと真正面からそういう所(風俗業)を活用してもらわないと、海兵隊の猛者の性的なエネルギーをきちんとコントロールできないじゃないですか。建前論じゃなくて、もっと活用してほしい』と言った」
橋下氏以外にも、安倍首相が4月22日の参院予算委員会で村山談話を「安倍内閣としてそのまま継承しているというわけではない」と答弁。翌23日には「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない」とのべている。
また、自民党の高市早苗政調会長が安倍首相の発言を受けるように、5月12日にNHKの番組で、「国家観、歴史観については首相は(歴代内閣と)違った点もあるかと思う」と表明。村山談話についても「『国策を誤り』とあるが、それでは当時、資源封鎖され、まったく抵抗せずに日本が植民地となる道を選ぶのがベストだったのか」と語り、番組終了後の会見で「当時は日本の生存が危うく、自存自衛が国家意思だと思い、多くの人が戦争に行った。私自身は『侵略』という文言を入れている村山談話にしっくりきていない」とのべたと報道された。
過去の日本国家によるアジア諸国への侵略、大量虐殺、朝鮮に対する植民地支配などの国家犯罪を美化し正当化しようとする日本の政治家の発言は、これまでも何度も繰り広げられてきた。繰り返されるのは、日本が敗戦した1945年8月15日に、国家犯罪を遂行した国体が解体されずにそのまま維持され今まできたこと、国家犯罪をきちんと清算しなかったからである。それが今の日本社会のもろもろの問題の根本原因にもなっている。そのような発言をする政治家たちは、日本の過去の国家犯罪を悪かったとは思っていない。
ただ、日本社会全体が右にかたより続け、それまでは簡単に口に出来なかったことが、臆面もなく堂々と言えるようになったという点が変わったと言えば変わったところだ。
諸外国の抗議があり日本が国際社会との関係が悪くなるから、このような発言が許されないのではない。自国の支配権拡大や金儲けのために他国、他民族を踏みにじり、人々の生命を奪い蹂躙したことを正当化しようとすることが許されない。日本の侵略のための一つのシステムとして作られた日本軍「慰安婦」制度を「必要だった」と言う歴史認識、人権意識、道徳観・倫理観すべてが許されないのだ。
今回の橋下氏の発言は日本軍「慰安婦」に関することだからか、大きな非難の声が上がっている。当たり前だ。
いま関心があるのは、日本社会が、こんなとんでもない橋下氏を、現在のもろもろの地位から引きずりおろせるのかということだ。とことん責任を追及できるのか、日本社会を見守りたいと思う。
しかし、仮に橋下氏が何らかのペナルティを受けたとしても、大きな意味で何も現状は好転しないと思っている。安倍首相、高市氏もその地位に居座り続けるだろうし、橋下氏への糾弾の声が、「高校無償化」からの朝鮮学校排除、朝鮮学校への補助金のカットなど朝鮮学校への弾圧・差別の是正へとは向かわないだろう。現に、橋下氏の問題が沸騰していた昨日、山口県下関市は「市民の理解が得られない」と山口朝鮮学校への補助金交付を見合わせることを明らかにした。
蛇足だが、手元にある産経新聞は、橋下氏の発言を客観的に掲載しているだけで、まったく非難していない。当然のことか。朝日新聞は関係団体の人々の糾弾するコメントを掲載している。しかし、日本軍「慰安婦」を「従軍慰安婦」と呼び続けている。他の新聞も同じだ。この部分でも、日本のマスコミの歴史観が垣間見れる。
日刊イオ:「従軍慰安婦」、日本軍「慰安婦」、日本軍性奴隷という名称について
http://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/a8c95d714482806f01b0546dcabcb3f5