ヘイトスピーチ問題をめぐる院内集会に参加して
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昨日、参議院議員会館で開催された「激化するヘイトスピーチをどう止めるか~攻撃を向けられた被害者たちの声を聞く」と題された院内集会に足を運んだ。
今年に入り、東京の新大久保や大阪の鶴橋など在日コリアンが多く住む、あるいは多く店舗を出している地域において、「鶴橋大虐殺を実行する」「ウジ虫ゴキブリ朝鮮人を駆除せよ」「良い韓国人も悪い韓国人もどちらも殺せ」などの差別と憎悪に満ちた排外主義的なデモが毎週のように行われている。これに対しては、街頭で有志らのカウンターアクションが行われ、メディアでもこの問題が取り上げられるようになっているが、現在法ではこれらのヘイトスピーチを規制する法律がないため、事実上の「野放し」となっているのが現状だ。いわずもがな、ヘイトスピーチは攻撃のターゲットとされた人びとの心身を深く傷つける。今回の集会も、ヘイトスピーチを止めるために何よりも被害者たちの声を伝える機会を設けようという趣旨の下、開催された。
集会では、ヘイトスピーチの被害者として浦本誉至史さん(連続大量差別葉書事件被害者)、朝鮮学校の保護者、鄭瑛惠さん(教員)の3人が発言。そのほかに、新大久保でのヘイトスピーチの現況についても報告があった。被害者の発言内容などについては次回以降のエントリであらためて書きたい。
今回の集会に参加するにあたって個人的に注目していることがあった。国会議員を対象にしたヘイトスピーチ問題に関するアンケートだ。このアンケートは集会を主催した人種差別撤廃NGOネットワークが主体となって実施したもので、衆参両院の全国会議員717人を対象にしたもの(実施期間は5月24日~6月18日)。今回の集会の場で結果が発表されることになっていた。
その結果は、というと、717人中、回答したのは46人、アンケート回収率は6.4%、全体の1割にも満たない数字だった。これには正直驚いた。この問題に対する関心度の低さが反映された数字なのだろうか。
アンケートの設問は3つ。
【設問1】ヘイトスピーチに対して国が何らかの対策を立てるべきだと考えるか
必要:41/不要:2/その他:1
【設問2】国が対策を立てるために、まずは国がヘイトスピーチの実態に関する調査をすべきという意見についてどう考えるか(設問1で「必要」と答えた人のみ対象)
支持:39/不支持:1/その他:1
【設問3】国会で差別に対する何らかの法規制について議論、検討する必要があると考えるか
必要:44/不必要:0
もちろん、回答がなかった議員が無関心だとは必ずしもいえないだろう。どのような内容のものであれアンケートには答えない方針の議員もおり、党としてのこの問題に対する見解が定まっていないため回答しなかった議員もいると聞いた。アンケート結果を発表した師岡康子さんはヘイトスピーチを行う側からのバッシングを恐れているのではないか、とも話していた。師岡さんは今回のアンケートの回答率の低さについて「議員としての責任を果たしていない」と指摘していたが、私も同感だ。
集会では公人によるヘイトスピーチや歴史修正主義的発言がネット上や街頭でのヘイトスピーチを下支えし助長しているという指摘があった。朝鮮学校排除を正当化し歴史修正主義的な発言もいとわない人物が現首相をはじめ与党や主要政党に少なからずいるという現実を見ると、今回のアンケートの回答率の低さもある意味妥当な結果だったのかと思ってしまう。
集会では、人種差別撤廃条約の法的義務に従い、ヘイトスピーチ対策を含む人種差別撤廃政策とその法制化を行うべく、ただちに国会における議論と調査を開始すべきであるとする提言が発表された。
差別やヘイトスピーチをめぐる法整備など制度的なレベルで問題解決を図るためには立法府の取り組みが必須だ。何よりも、このような差別やヘイトスピーチはいけないと国としての明確な姿勢を示すことの意味は決して小さくないだろう。一刻も早いアクションが待たれる。(相)