在日本朝鮮人人権協会の雑誌「人権と生活」
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月刊イオ編集部は、その名の通り月刊誌を作っています。そのためか、新聞や雑誌などのいろいろな定期刊行物や書籍が送られてきます。資料交換としてお互いに「送り合いっこ」している定期刊行物もいくつかあります。書籍の場合は、イオの書評欄用に送られてくるものがほとんどです。
イオ編集部に集まってくる出版物の中から、今日は「人権と生活」という雑誌を紹介したいと思います。
「人権と生活」は、在日本朝鮮人人権協会が出しているもので年2回の発行です。頒価800円。在日本朝鮮人人権協会についてはホームページをご参照ください。ホームページには在日朝鮮人の権利問題に関する資料・情報が充実しています。http://www.k-jinken.ne.jp/
「人権と生活」にも毎号、在日朝鮮人の権利問題についての充実した記事が掲載されていて、毎号隅から隅まで読んでいます。私が1ページ目から最後のページまで読むのは、月刊イオと「人権と生活」だけ。
先日、「人権と生活」(B5判・80頁)の最新号(2013年夏号)が手元に届きました(写真)。通巻で36号となります。特集は「「高校無償化」からの朝鮮学校はずしにNO!」。
特集の記事を紹介すると、
・―「高校無償化」、補助金停止問題―省令改悪、審査打ち切りという暴挙に及んだ安倍政権
・大阪朝鮮高級学校に「無償化」の適用を―大阪朝鮮学園無償化裁判の現況について
・朝鮮高校生就学支援金不支給違憲国家賠償請求訴訟について
・在日コリアンの子どもたちに民族教育を受ける権利の保障を~神奈川での弁護士活動を通して~
・思いは伝わる、諦めない
・「高校無償化」制度からの朝鮮学校除外、これは差別である―国連・社会権規約委員会が「高校無償化からの朝鮮学校はずしにNO!」
特集以外の読み物も最新号は充実しています(いつも充実していますが)。
・インタビュー 国連活動をふりかえり…人権侵害の迅速かつ実効的な救済をめざして
・寄稿 長生炭鉱水没事故犠牲者追悼碑完成!―歴史の真実を刻み、人権・平和の礎としたい―
・寄稿 日本の安全保障政策が生み出す「北に繋がる者」への圧力
・エッセイ 日本軍「慰安婦」ハルモニたちの重重に積もる恨を解く
2つ目の寄稿は、朝鮮人に対する監視と弾圧を日米安保体制という視点から考察し、米国を頂点とする「国際秩序」とそれを支える日本の安全保障政策により、「北朝鮮」が一方的な「悪」とされ、「北に繋がる者」にはどのような人権侵害も許されると流れが日本にできあがっていることを指摘しています。
3つ目のエッセイは、「重重プロジェクト」として日本軍「慰安婦」被害者の写真展を開催した写真家のアンさんが、被害者のハルモニたちとの出会いのなかでの思いをつづったものです。
最新号の巻頭の「主張 日本の植民地主義の根幹を揺るがすために」という文章から一部を抜粋し紹介します。
「日本政府が朝鮮学校への弾圧政策の中止、日本軍「慰安婦」被害者への公式謝罪と賠償を通じた法的責任の遂行などをはじめとした植民地主義の克服をしない限り、今後も反朝鮮人集団や右翼政治家の出現は事切れることがないだろう。」
「人権と生活」は毎号、在日朝鮮人の権利に関する焦眉の問題を取り上げると共に、基本となる問題や実践的な法律問題を掲載していて、たいへん勉強になります。日本社会を違った視点から考察するという意味で、日本人にもたいへんお勧めです。
最後にまとめられている資料もためになります。最新号では「高校無償化」からの排除、補助金支給停止に関して、裁判の資料や日弁連をはじめとする弁護士会の会長声明、社会権規約委員会の日本に対する総括所見(一部抜粋)などの資料が載せられています。毎号ある「在日同胞出生、死亡統計」「在日同胞離婚統計」「在日同胞婚姻統計」のような基礎資料が、個人的には興味があり熟読しています。何年か前に、特別永住資格をもつ在日朝鮮人の数が50万人を切った数字を「人権と生活」の資料で見て、軽くショックを受けたことを覚えています。
「人権と生活」の読者数がどれくらいかは知りませんが、もっともっと多くの人に読んでもらいたい雑誌です。在日朝鮮人問題を、日本社会を本当に理解するためにぜひご購読をお勧めします。連絡先は先に紹介したホームページから。(k)