丸木美術館と朝鮮人被爆者を描いた「からす」、そして27年前の記事
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月刊イオ8月号が明日、完成します。
8月号の特別企画は、「世界の戦跡・平和博物館」。世界には戦争の事実を伝えたり平和を訴える博物館が数多くありますが、それらを紹介したものです。月刊イオの誌面なので、やはり朝鮮半島の北と南、日本にある博物館が多く紹介されています。
日本からは・北海道の朱鞠内・笹の墓標展示館、沖縄県平和祈念資料館、埼玉県の「原爆の図 丸木美術館」の3つを紹介しました。私が担当したこともあり、今回、「原爆の図 丸木美術館」を訪ね写真を撮影してきました。
丸木美術館は、画家の丸木位里・丸木俊夫妻が1967年に開館させた美術館で、名前にあるように「原爆の図」が展示されていることで有名です。丸木さん夫妻が共同制作として原爆の図第1部《幽霊》(発表時は《八月六日》)を完成させたのは1950年です。原爆の図は15部まであるのですが、15部の《長崎》が完成したのが1982年で、30年以上にわたり描いてきたことになります。現在、美術館には第1部から第14部までがあります。
今回、わざわざ写真を撮りに足を運んだのは、原爆の図第14部《からす》が被爆した朝鮮人のことを描いた作品で、ぜひ《からす》を撮影して誌面に載せたかったからです。《からす》は、被爆し亡くなった朝鮮人の死骸が片付けられずに放置され、その死骸をカラスがむしばんでいる姿を描いています。
丸木夫妻が原爆の図を描いた理由や絵に対する思い、《からす》をはじめ原爆の図についての説明と写真、その他丸木美術館の情報はホームページをごらんいただきたいと思います。http://www.aya.or.jp/~marukimsn/index.htm
また、丸木美術館を訪ねたかったもう一つの理由は、30年ほど前に一度訪ねたことがあり、今の美術館の様子が知りたかったからです。後で調べてみると、1986年の7月、ちょうど27年前に訪問していました。
その時も取材で、某月刊誌に掲載する丸木俊さんのインタビューのためでした。今回、某月刊誌のインタビュー記事を家の本棚から引っ張り出してみると、ずいぶんと思い違いをしていたことに気づかされました。まず、27年前も一人で訪ね私自身がインタビューしたと思っていたのに、記事を見てみると、某雑誌の女性編集者(同僚)と一緒に取材しており、インタビューをして記事をまとめたのも女性編集者でした。私は丸木さんの写真を撮影しただけでした。
某月刊誌のインタビュー記事の中から、丸木俊さんの言葉を少し抜粋して紹介したいと思います。
「でも初めは、アメリカはひどいと怒っていただけだったんですよ。しかし、一九七〇年にアメリカで原爆の絵の展覧会がようやく開かれたときに、ある人から、もし中国の絵描きが南京大虐殺の絵をかいて日本にもっていったらどうしますかって聞かれて、びっくりしたんです。私の思想というのかな、そういうものの中に、やはり被害者意識にこりかたまっている考え方があったわけですね。名前をつければ民族主義的排外思想ということになるんでしょう。原爆反対とかいっているのに、そういうものが自分の底流の中にあったということに気がついて、本当にびっくりしたんですよ。
それからです。米兵捕虜の死を絵にかいたり、朝鮮人被爆者をテーマにした『からす』という絵をかいたり……。『からす』、まだ一枚ですし、お手やわらかな絵ですよね。もっともっとひどい状況だったんですから。」
「日本の中にはやはり、“大和魂”みたいなものがあるんです。金明植さんの『日本刀』という詩に“日本刀は錆びることがないのです 日本刀は人々を殺し最後に自分自身を殺します 日本刀は錆びずに四〇年ぐらい待つの平気です”という内容のくだりがあるんです。今ちょうど戦後四〇年でしょ。日本は豊かになったといわれますが、この四〇年間、なにかがじっと潜んでいて、すきをうかがってきたんじゃないかと思います」
丸木さんが言う、「潜んできたなにか」は、いま日本社会で大手を振って堂々と正体を現していることがわかります。身を隠す必要がないほど「国民の理解」を得ています。日本刀は40年どころか70年近く錆びずにいます。待ったかいがあったと喜んでいるのではないでしょうか。このような状況のなかで、「未来志向」というような言葉が過去を覆い隠すために使われるのなら許されることではありません。
今回、丸木美術館を訪ねた時は、14枚の原爆の図のうち6枚が貸し出されていて、8枚が展示されていました。撮影などあわただしく、ゆっくり見る時間がなかったので、また改めて訪ねたいと思っています。丸木美術館には、関東大震災のときに虐殺された朝鮮人犠牲者のための「痛恨の碑」も建てられています。
ぜひ、日刊イオの読者のみなさんも一度、丸木美術館に足を運んでください。(k)
丸木美術館
いつか行こうと思いながら、ちょっと遠いなあと二の足を踏んでいましたが、女たちの戦争と平和資料館にチラシが置いてあったのを見て、この機会にと行ってきました。
原爆の図や他の共同制作に圧倒されました。行ってよかったと思いました。もちろん《からす》も見ました。
今回はトークイベントがあったので、次に行くときはもっとじっくり作品を見たいと思います。
いぬどし様へ
コメント、ありがとうございます。
丸木美術館では様々なイベントが行われているようですね。私もまた訪ねじっくりと作品を見たいと思っています。