ソウル高等法院が新日鉄に賠償判決
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去る7月10日、韓国ソウル高等法院は植民地時代に強制労働をさせられた被害者に対する旧新日本製鉄(現・新日鉄住金)の損害賠償の責任を認め、一人当たり1億ウォンの支払いを命じる原告勝訴の判決を言い渡した。
この訴訟は昨年5月24日の大法院(日本における最高裁に相当)判決を受けた差し戻し審であり、大法院判決に基づき「日本の支配下での強制動員を不法と見る韓国憲法の核心の価値と衝突し、侵略戦争を認めない世界の文明国家の共通価値や日本国憲法にも反する」と指摘し、新日鉄の主張をすべて斥けた。
報道によると、新日鉄は「徴用者等の問題を完全かつ最終的に解決した日韓請求権協定、すなわち国家間の正式の合意を否定する不当な判決であり、誠に遺憾」とし、上告するとしており、日本政府も10日の記者会見で、同様に日韓請求権協定で解決済みとの見解をあらためて表明した。
請求権をめぐる問題について、判決では次のようにのべている。
…日本の国家権力が関与した反人道的不法行為や植民地支配に直結した不法行為に因る損害賠償請求権が、請求権協定の適用対象に含まれたと見るのは難しい点等に照らしてみれば、上の原告らの損害賠償請求権に対しては、請求権協定で個人請求権が消滅しなかったのは勿論であり、大韓民国の外交保護権も放棄されなかったとみるのが相当である。
戦後補償問題で韓国の裁判所が日本企業に賠償を命じたのは初。韓国では同様の訴訟がほかに4件あり、この度の判決は他の訴訟にも少なくない影響を与えるといえる。7月30日には釜山高等法院でも三菱重工事件の判決が言い渡される。
また、植民地支配からの解放後、韓国においては軍事独裁政権下で長きにわたって不問にされてきた日本の植民地支配責任を問い直すものとしても、この度の判決は画期的といえる。
植民地支配したアジアの被害国はもとより、米議会が安部政権に代表される歴史修正主義に懸念を示すなど、昨今国際的な批判はますます高まっている。被害者らの年齢が優に80、90歳を過ぎている今、日本による植民地支配のすべての被害者らの被害回復が一刻も早く実現されるよう、このたびの判決が足がかりとなることを期待したい。(淑)