秋、平壌と開城の旅へ
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近年、朝鮮民主主義人民共和国は観光事業に力を入れている。意外に知られていないが(いや、案外知られているのかも)、朝鮮は豊かな観光資源を持つ国だ。白頭山に妙香山、金剛山、首都平壌に開城…。世界遺産も、04年に指定された高句麗壁画古墳群(63基)と今年7月に指定された開城の遺跡群(12ヵ所)の二つがある。周辺に高句麗壁画古墳が集中する平壌は高句麗時代の首都、開城は朝鮮初の統一国家・高麗の首都として有名だ。
そして、本誌イオの発行元でもある朝鮮新報社がこのたび「平壌・開城世界遺産ツアー」を企画した。開城の世界遺産登録を機に、両古都の歴史遺跡をはじめとする観光地を訪れてみたいという要望に応えたものだという。5泊6日のツアーに参加したのは29人で、在日朝鮮人、日本人が半々ずつ。一行は昨日、成田空港と関西国際空港を発ち、今日平壌入りする予定だという。
季節は秋。事情が許すなら私も平壌と開城の歴史遺跡めぐりを楽しみたい(無理なら日本国内の旅行でもいい)。社会人になって都合8回訪朝したが、仕事以外の目的で訪れたことは一度もない。普通では行けないような場所を訪ね、さまざまな分野の人たちと会う取材も楽しいが、観光地を訪れた場合でも、(その後の記事執筆も含めて)「仕事」という意識が先立って精神的に緊張を強いられるケースが多くなる。
ただ、高句麗壁画古墳は04年の世界遺産登録直後に内部に入って取材できる機会に恵まれた。専門家のナビゲートつきで2日間、主要な古墳を回ることができたのは、普段誰もが気軽に訪れることができる場所ではないうえに世界遺産登録直後だっただけに、自分にとって幸運な経験だった。一方の開城の高麗時代の遺跡群も、まとまった時間はとれなかったが何度か訪れる機会があった。
現在、朝鮮と日本は国交がなく、関係もよくない。日本政府の制裁措置によって、訪朝するのにもさまざまな制限が存在する。在日同胞はもちろん日本人も何の気兼ねもなく自由に訪朝して観光を楽しむ時代が来ればどんなにいいだろう。このような厳しい情勢の中でも、今回のツアーなどの取り組みを通じて少しでも交流やつながりが維持されることを願っている。(相)