特定秘密保護法案
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衆院を11月26日に通過した特定秘密保護法案。
原発、外交、軍事…。権力は暴走するがゆえに、これを監視するシステムを持つことが民主主義社会には不可欠と考えられてきた。しかし、この法律ができれば、最長「60年(例外で60年以上も)」は秘密が公開されないのだから、これからは、生きているうちに突き止めることができない事実も増えていくだろう。何を秘密にするのかは首相をはじめとした権力者が決め、一般市民は、何が秘密に指定されるかもわからない。「秘密のブラックボックス化」が進んでいく…。
この法律には、秘密を取り扱う人たちが国や都道府県警に調査、監視される「適性評価制度」があり、情報を漏らす恐れがある人物かどうかを調べるための調査対象は、家族、恋人、友人へと際限なく広がっていく。この法律はあらゆる人が対象で、誰も無関係ではない点がコワイのだ。
私自身の仕事にも当然、影響が出てくる。報道機関の取材・報道も、「漏えい」や「教唆」(そそのかし)とみなされ、秘密と知らないまま取材した記者が逮捕され、取材を指示した上司が「教唆」の罪に問われ、新聞社、出版社が捜索される―という事態が起こりうるからだ。
法律の縛りは、当然、記者たちを委縮させる心理的効果を持つ。
20代の頃は、取材先で出会う日本の記者とざっくばらんに意見交換することが多かったものの、最近は「社の決まりで自分の意見を話すことができなくて…」と言い出す若い記者が増えてきた。会社員である限り、ものを書くには一定の線が必要だろうが、報道機関自体が窮屈になっているのだろう。
日本政府が朝鮮高校を「高校無償化」の対象から外して以来、各地では、自治体が朝鮮学校への補助金を停止したり、議会での議論も経ずに要綱を改悪し、補助金制度自体をなくす事態が起きている。そのプロセスは想像以上に乱暴だ。各議会では、補助金を給付するに至った当時の経緯を振り返ったり、外国籍者の教育を受ける権利や彼らの置かれた経済状況について、声があがらない。そもそも、少数者の思いを代弁して質問する議員が少ないのだろう。
例えば30年後、私たちの子どもや孫たちが今日の補助金停止の事実を調べようとした場合、国会議事録や都道府県、市議会の議事録を見るだろうが、こうした記録は当時の社会状況や市民の意識を探るうえで不可欠な資料になる。しかし、これらも黒塗りで出てくる恐れがあるのだ。いや、当時、どんな資料が残されたのかを洗い出すことも難しくなっていく。特定秘密保護法案は国が勝手に「秘密」を決めることができるのだから。
このコワーい法律が成立へと進むなか、新しい駐日アメリカ大使の就任報道は華やかだった。
暗殺された父の英雄伝に、女優並みの容姿。馬車から降りる新大使をデジカメ片手に取り囲む市民の様子は、ゴールデンタイムのトップニュースを飾っていた。
この異常な歓迎ぶりは、米国のイメージアップに役立っただろう。そして、アメリカとの軍事同盟を一層強化するための特定秘密保護法案の可決。イメージ作りに躍起になった人間は、法案成立の一報を心待ちにしているに違いない。(瑛)
特定秘密保護法案
東京に住む日本人です。
私は21日は日比谷野音の集会に、26日は官邸前に行きました。日比谷野音では会場に入れませんでした。
それにしても、ニューヨーク・タイムズに外国特派員協会、国連人権理事会特別報告者に国際ペン会長と、これほど国際的に反対、懸念される法案がかつてあったでしょうか。