無観客試合
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サッカー・Jリーグの人気クラブ・浦和レッズのサポーターが、3月8日に行われた浦和-鳥栖戦で、「JAPANESE ONLY」の横断幕を掲げた問題。Jリーグは13日、浦和に埼玉スタジアムで行われる清水戦を「無観客試合」とするJリーグ初の厳罰を科した。
Jリーグが始まって20年、今や外国人選手がいないチームはなく、主力選手が海外組のチームは多い。「Jリーグ公式記録集2014」には、Jリーグに籍を置いた1000人近い外国人選手の名前が載っている。彼らは、日本で、日本人選手とともに、その歴史を作ってきただけに、今回の差別的な横断幕にショックを受けている人は少なくないだろう。
ヘイトスピーチが日本社会で横行するなか、ついにそれがサッカーの競技場に持ち込まれてしまった衝撃は大きかった。
とくに今季から、浦和に移籍した後輩が、気が気でならない。彼を心配し、Jリーグで活躍した先輩たちや現役の選手たちが、「選手を守ってほしい」と声をあげていたが、同じ思いだ。
浦和レッズは今後、クラブ内部で選手、指導者、スタッフの意識向上に努め、ファンやサポーターの参画も促していくという。外国人選手、彼らを応援するサポーターが安心してグラウンドに足を運べるよう、今回の悲しい出来事が二度と起こらないよう、努めてほしい。今回の問題を、一部のサポーターの問題にとどめてほしくない。
欧州サッカー界でも、根強い差別意識が問題となってきた。だからこそ、 2013年5月に開かれた第63回FIFA(国際サッカー連盟)の総会では、「人種差別主義及び人種差別の排除」を加盟協会の責任とし、FIFAの差別禁止規定を各国協会でも採用することが義務づけられた。この決議を受け、日本サッカー協会は、2014年度から差別に関する条項を新たに加え、罰則規程を変更した。今回の厳罰もこの流れの中にある。
無観客試合は、Jリーグ初というが、差別的な言動によって苦しみを抱えた当事者の声は、どこまで届いているのだろうか。政府はじめ、社会的に影響力を持つ団体がヘイトスピーチへの警鐘を鳴らす声を挙げなければ、少数者の声はかき消され、差別は横行し続けるだろう。(瑛)