東京・無償化裁判・第1回口頭弁論
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4月2日、無償化制度から排除された東京朝高生が起こした国家賠償請求訴訟の第1回口頭弁論が行われました。(2月17日提訴)。
裁判の舞台となった東京地裁は42席を埋め尽くそうと、380人が傍聴券を求めて長蛇の列をなす関心の高さでした!
無償化排除から丸4年、続く差別をガマンできない、自分たちの勇気でこの差別を変えようと生徒たちが立ち上がった法廷闘争。生徒たちを守ろう、励まそうと、平日の昼間に多くの人たちが地裁前につめかけ、熱気に満ちたスタートとなりました。
東京の無償化裁判には62人が原告として名乗りをあげましたが、この日は提訴当時、高3年生の男子生徒、提訴時高2の女子生徒が意見陳述を行いました。プライバシー保護のため、傍聴席からは被告の顔が見えないように、パーテーションで仕切りが設けられています。
今春、朝高を卒業した男子生徒は、「3月2日が卒業式でしたが、私の高校生活は高校無償化制度から排除され続けた3年間でした。国がおかしなことをしているのだから、立ち上がって正々堂々とアピールしたい。裁判所は、法律と正義に基づいて判断するところと学びました。裁判官が、雰囲気に流されずに判決を下してくれると信じている」と思いを託しました。
現在、高3の女生徒は、「中学の頃に無償化のニュースを聞いたとき、共働きの両親の経済的な負担が減り、少しでも楽になると思った」こと、朝高に通いはじめ、学校生活が充実すればするほど、「なぜ朝鮮学校だけが除外されるのか」という疑問がわいてきたこと、無償化排除は、自分の意思ではどうすることもできないと思っていたが、「勇気を出して裁判の原告となり、裁判の中で朝鮮学校を知ってもらうことで、朝鮮学校を無償化の対象にできると考えるようになった」と、この間の心境を語ってくれました。将来は朝鮮学校の教員になる夢も伝えてくれた彼女が最後に訴えた言葉です。
「裁判官の皆さん、偏見を持たず、朝鮮学校に通う私の姿をみてほしい。私たちの学ぶ権利を守ってほしい」―。
62人の生徒たちは、当初中学生でした。
朝高生となったことで、差別の直接的な被害者になった。けれど、そのことに目をそむけず、勇気を振り絞り、裁判を戦うことを決めた思いが、彼、彼女たちの肉声からひしひしと伝わってきました。
裁判終了後、法曹会館で行われた報告会もまた、あふれんばかりの人でした。
原告の保護者たちが「最強の弁護団」と誇る弁護士の方々が並び、裁判について解説し、また原告の主張を代読しました。
東京朝高弁護団の主張は、高校無償化法の精神に照らした場合、受給者である朝鮮高校生を排除するのはおかしい、当然、施行規則も朝鮮学校が対象となるよう作らないとダメだ、朝鮮高校は指定の基準を満たしている―というシンプルなものです。
原告の主張に対し、この日、国側は6月20日まで回答すると答えました。
次回裁判は7月2日。本格的な論争は秋以降になる予定です。
いつも無償化の集会では、生徒やオモニたちの言葉に言い尽くせぬ悲しみ、それを乗り越える勇気に満ちた言葉をいただいてきます。
あるオモニの言葉を紹介します。
…とうとう裁判が始まりました。それも原告62名が高校生、子どもたちです。
…学校から「もう裁判をするしかない。勝つためには、子どもたちが原告にならざるをえない」と初めて聞いたときは、本当に驚きました。原告となる子どもたちの気持ちや将来のこと、そしてその親の心情をわかっているのだろうか。自分の子どもが原告になるということを想像したらそんな風に言えるのだろうかと憤りも感じました。
…しかし、こんな難しい状況でも勇気を振り絞り、「今、やらないと!」と子どもたちが立ち上がりました。もう、そんなことは言っていられません。
先ほど傍聴しましたが、「ますます親が踏ん張らないと!」と思いました。どんなに怖かったか。(法廷で)立派に自分の思いを伝えている姿を見て、胸が締め付けられました。
…私たちの祖父母や父母がずっと戦ってきたように、この時代に生きる者として、決して次の世代に残してはいけない。私が親の背中を見てきたように、私も自らの行動で子どもたちに伝えたいし、一緒に戦っていきます。全力で手助けするし、危険なことにさらされそうになったら、盾になります。そうならないように、社会では同胞が、学校では先生が、そして、法廷では弁護士の先生が守ってくれるでしょう。
私たち保護者や学校関係者は裁判になれていません。頼れるのは弁護士の先生です。最強の弁護団がついているので、何の心配もいりません。原告の子どもをはじめ、すべての子どもたちの学ぶ権利のため、差別のない社会を作るために、どうかよろしくお願いいたします。
涙ながらの訴えでした。
「消費税も8%アップしたが、無償化運動の熱気も上がっている」という朴龍浩先生の発言には、笑いがあふれました。
裁判闘争は、実際大変ですが、みんなで子どもたちを守っていこう―。この輪が広がっていることを実感できた裁判の取材でした。
イオブログ読者の皆さんも、ぜひ裁判の現場に足を運んでみてください。(瑛)