群馬の朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑の存続の危機に―政治的とはどういうことか
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群馬県高崎市の群馬県立公園に《記憶・反省・そして友好》という追悼碑があります(写真)。群馬県で強制連行・強制労働により犠牲となった朝鮮人を追悼する碑です。この追悼碑は、日本人有志が2004年4月に建立したもので、私も月刊イオの2011年8月号「もうひとつの旅2011 群馬・高崎」で取材し写真も撮影しました。また、日刊イオ(2011年7月6日)でも追悼碑について書いています。
この追悼碑の存続が危機に瀕しています。
4月18日、毎日新聞のネット版は次のように伝えています。
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第二次世界大戦中の強制連行で犠牲になった韓国・朝鮮人を追悼しようと、群馬県高崎市の県立公園「群馬の森」に建てられた石碑を巡り、県が「政治利用されている可能性がある」として設置許可の更新に応じていないことが分かった。碑を管理する市民団体「追悼碑を守る会」は「平和と友好を誓った碑を撤去せざるを得なくなる」と懸念している。
2004年1月に市民団体が県の設置許可を得て、追悼碑を建立。高さ1.8メートルで、「わが国が朝鮮人に対し、多大の損害と苦痛を与えた歴史の事実を深く記憶にとどめ、二度と過ちを繰り返さない決意を表明する」などと刻まれている。
県や守る会によると、12年から「碑文が反日的なので撤去して」との苦情が計約100件あった。その後、県は、12年の追悼集会で参加者が高校授業料無償化の対象から朝鮮学校を除外する政府方針を批判したことなどについて、「政治的行事を行わないと定めた設置許可条件に抵触する可能性がある」と問題視するようになった。
県は今年1月に「政治的発言と考えるか」などとの質問を出したが、守る会は「集会が丸ごと政治喧伝(けんでん)の場であったかのように決めつけている」として回答を拒否。碑の設置許可は10年間だが、県は更新申請を保留し、1月に期限が切れた。
守る会の猪上輝雄事務局長(84)は「韓国や中国との関係がぎくしゃくしているこの時代にこそ、碑の意味がある」と訴える。県都市計画課は「再度の回答要請も含めて対応を検討中」としている。
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産経新聞もこの問題を産経新聞らしく伝えています。http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140418/lcl14041810370001-n1.htm
毎年、追悼碑の前で同胞や日本人、朝鮮学校児童・生徒が参加し追悼集会が開かれてきましたが、このような事情があって、昨年の第10回追悼集会と先週土曜日(19日)に行われた今年の第11回追悼集会は、他の会館に場所を移し開催することとなりました。
漫画「はだしのゲン」に対し「ありもしない日本軍の蛮行が描かれており、子どもたちに間違った歴史認識を植え付ける」などの抗議があり、児童生徒らに自由に見られないように閉架措置とするなどといった事件が起こっています。
また最近では次のようなことも起こりました。ミスインターナショナルで世界一となった日本人女性が「旧日本軍の慰安婦問題について謝罪の必要はない」という日本国内の意見に、「恥ずかしく、憤りを感じている」と発言したことに対し、ネット上で攻撃や中傷が集中しました。その女性のフェイスブックに、「世界で恥をさらした」「教養がないならデリケートな国際的政治問題に言及するべきではない」などと書き込まれ、結局、その女性は「勉強不足、…みなさんに大きな誤解と混乱を招いたことをおわびする」とコメントせざるを得ませんでした。
高崎市の追悼碑の問題と根っ子を同じくするものです。このような事件は、いま日本で当たり前のように起こっています。
歴史修正主義者たちの抗議に、行政も団体も個人も、攻撃を恐れ、トラブルを嫌がり、面倒なことを避けようとし、責任を回避し、考えることをやめて、どんどん後退していきます。そこに昨今の「北朝鮮・総聯」に対しては何をやっても言っても許されるという風潮が重なる。その結果、日本社会全体が歴史を歪曲して加害者としての過去をなかったことにしようと動いてしまっています。それは、継続して加害し続けているということなのですが、どれだけ認識しているのでしょうか。
毎日新聞の記事には、「政治利用」「政治的行事」「政治的発言」という言葉が出てきますが、追悼集会の内容に関して「政治的云々」と言うならば、追悼碑に抗議することはもっと政治的だし、県が抗議を受けて許可しないのも政治的です。
日本が過去に行った過ちに対し、日本人自らが「日本は間違っていた」「犠牲者を追悼したい」「二度と繰り返さない」と集会を開くことがなぜ問題となるのでしょうか。正しいことだし「反日的」なことでもありません。
《記憶・反省・そして友好》の追悼碑が撤去されるようなことは絶対に許されません。追悼碑を建立し管理してきた「守る会」では、今後も県に働きかけ、許可を得るように運動していくとしています。
最後に、追悼碑の碑文の写真を掲載します。建設に当たり、県有地に建てるということで、県との交渉のなか、申請団体名が「朝鮮人・韓国人強制連行者追悼碑を建てる会」から「「記憶 反省 そして友好」の追悼碑を建てる会」に変更となり、碑文は大幅に縮小して「強制連行」の用語を「労務動員」に変更することになったということです。(k)
無題
この記事にあるような国を挙げての「事無かれ主義」に通底するするものについて、別の事例から考察した内田樹氏の一文は実に参考になります。
内田樹の研究室
http://blog.tatsuru.com/2014/04/18_1041.php
Unknown
そもそも、朝鮮人強制連行自体が国家政策という極めて「政治的」(というか政治そのもの)行為によってなされたものであって、その追悼行事において「政治的発言」云々は一切通用しません。
その政治性・思想性の継続を徹底批判することこそが、むしろ「記憶」であり「反省」であり、「友好」のための唯一の方法だといえるはずです。
河野談話などでの約束を安倍に守らせよう!
私達が、すべきことは、このようなヘイト行為、ヘイトスピーチの元凶である安倍政権に対して、河野談話を守り、日本は侵略戦争と植民地支配、その中での極悪な従軍慰安婦を強要=日本軍による性奴隷強要について痛苦に反省し、二度と繰り返さないために、きちんと歴史教育をすることを強く要求することです。共に、頑張りましょう。
1、
河野談話は日本は侵略戦争と植民地支配について痛苦に反省し、二度と繰り返さないために、きちんと歴史教育をすると国際的に約束しています。これに対する違反を追及し、実行を要求する闘いが必要です。
日本政府は一貫して河野談話を承認し継承してきた。安倍も、です。河野談話を認めたにもかかわらず、その約束をほごにし、歴史教育を全く逆のものにしてきた。これがヘイトスピーチの元凶です。
同時にヘイトスピーチは安倍の国際公約違反の証拠です。河野談話には実行行為者・責任者の処罰、及び、被害者への賠償責任を果たすという事は書いてないが、論理的帰結として、当然それは、含まれます。これから、在日の人々はその点での特別な権利、侵略戦争と植民地支配への責任追及と賠償請求という特別な権利は、当然有しているということになります。そしてそれを、日本政府は世界的にも、歴代認めてきたのです。そういう特別な権利、「特権」を、です。当然ではありますが。その特別な権利、「特権」の行使に対して誠実な履行を日本政府に求めるのは当然のことです。
2、河野談話を以下、外務省のHPから引用します。
「慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話
平成5年8月4日
いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果がまとまったので発表することとした。
今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。
なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。
いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。
われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。
なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。」と。
今回の群馬におけるひどい行為は、群馬県で強制連行・強制労働により犠牲となった朝鮮人を追悼する碑を、撤去させようという行為は、安倍政権が河野談話などの約束を守らず、侵略戦争と植民地支配を居直り、従軍慰安婦強要を居直り、デマ教育を行ってきたことによるものです。河野談話などを守るという国際公約違反であり、その証拠を形成します。この確かな証拠を持って、安倍に、その責任をとらせましょう。
京都生協の働く仲間の会様へ
コメント、そして資料の紹介、ありがとうございます。群馬のこの問題に関しては、現在、裁判が争われています。月刊イオ、日刊イオでも注視して伝えていきたいと思っています。
私も歴史教育は特に重要だと思っています。侵略の歴史を抹殺しようとする勢力に対抗するため、共にがんばって行きましょう。