「在日・現在・美術」
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昨日、東京の神楽坂で開催中のある美術展に足を運んだ。
ギャラリーeitoeikoで4月18日から始まった「在日・現在・美術」展。東京・小平にある朝鮮大学校の教育学部美術科出身の研究院(大学院)生および院の卒業生5人による企画展だ。出展した鄭裕憬さん、李晶玉さん、鄭梨愛さん、李靖華さん、昌輝さんはいずれも在日朝鮮人3世。
昨夏、鄭裕憬さん、李晶玉さん、鄭梨愛さんの3人が学内で開催したグループ展「在日は必要だった」を見に行った縁もあって、今回も足を運んだ次第だ。
どのような展示なのか、アートにど素人の私が説明するのもなんなので、以下、画廊のオーナー兼ディレクターの癸生川栄さんが書いた本展の紹介テキストから一部を引用する。
日本で生まれ、日本で育った「外国人」という特殊なコミュニティに属するアーティストは何を考え、何を示すのでしょうか。
主観的輪郭ということばから、インターネットに流れる北朝鮮の風景を客観的に考察していくチョン・ユギョン。ダ=ヴィンチや鴨井玲の構図をヒントに、目に見えない感情の揺れを赤色と青色の二色にわけて描く李晶玉。かつて日本に渡ってきた祖父の現在の姿を現代の街並みにあわせ、それぞれの家族にそれぞれのささやかな歴史が存在することを伝える鄭梨愛。
もつれた糸のように三角形をひたすらにつなげる李靖華、人物を描くと「似ていない」と文句をいわれるため動物をモチーフに「数独」を描く昌輝。彼らが在日という目に見えない枠組みから美術によって獲得し、そこに託したものは、表現の自由であり、いまを生きる彼ら自身の姿ではないでしょうか。テーマを見つめて、はじめは気付かなかったことを新しく発見して伝える。その行為は、写実に学ぶ日本画のあり方にも似ています。
美術評論家・椹木野衣氏が1998年に発表した『日本・現代・美術』から16年。日本はどう変わり、どう変わらなかったのでしょうか。生まれながらの異邦人作家がもつリアリティが、いまの社会を映し出します。ムサビのまとなりにある全寮制の朝鮮大学校の中、研究生として制作を続ける彼らの、画材と食材と漫画とiPodの散らばるアトリエから生まれた作品からは、若さと情熱にあふれた絵画の姿がみつかるかもしれません。
ギャラリーでは、展覧会が実現した経緯、作品の評価、タイトルに込められた意味などオーナーの癸生川さんに懇切丁寧に説明していただいた。興味深い話もたくさん聞けた。
展示を見た感想としては、各作家の作品がみな個性的、コンセプトにもそれぞれ特徴があってよかった。作品が展示された空間には「多様性」という言葉がしっくりくるだろうか(大した感想になっていなくてすみません)
何より、みな若い。今後もさまざまな経験を積んで自らの可能性を広げてほしい、と思った。
同展は5月17日まで。開廊は12時から19時までとなっている(日曜、月曜、祝日休廊)。
ギャラリーの場所など詳細は、eitoeikoのHP http://eitoeiko.com/
や同展のfacebookページ https://www.facebook.com/events/755741727778838/?ref=5 まで。
出展者の在廊日に合わせて訪れれば、直接本人の話も聞けるのではないだろうか。
画廊は矢来町の閑静な住宅街にある。春の陽気の中、神楽坂の散策がてら足を延ばしてみてはいかがだろう。(相)