うやむやにしてはいけない発言
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出張先の大阪でアクセスしたSNSのタイムラインを埋めるニュースに一瞬目を疑った。
18日、東京都議会で女性の晩婚化や晩産化などの問題をめぐる支援について質問した女性都議に、「お前が早く結婚すればいいじゃないか」という酷い野次が飛んだ、というのがその内容。野次を浴びた塩村文夏都議(みんなの党)によると、さらに、「(子どもが)産めないのか」などの発言も聞こえたという。
これが女性に対する明確なセクシュアルハラスメントであり、女性の人権を蔑ろにする発言であることに異論の余地はないだろう。
悪質な野次を飛ばしたのは誰なのか―。塩村都議およびみんなの党は、発言は「自民党の席から聞こえた」としている。同党は発言者の処分を求める申入書を議長あてに提出する方針だ。
件のセクハラ野次の波紋は広がっている。この発言を告発する塩村氏本人のツイートから火がついた批判の声はウェブ上を中心に広がり、都議会には昨日まで1000件を超す抗議が殺到したという。一方、発言元として名指しされた自民党の吉原修幹事長は、「自民の議員が述べた確証はない。会派で不規則発言は慎むように話す」と述べるだけの腰の引けた対応で、発言者を特定せず幕引きを図ろうとしている。
以上がことの顛末。
ニュースに接して、都議会議員という公職につく人間が旧態依然とした女性蔑視観にいまだとらわれているのかと暗澹たる気持ちになった。野次が発せられた瞬間、議場の一部が笑いに包まれたと報じられているが、この発言に同調するような議員が少なからずいたということにも問題の深刻さが表れてはいまいか。
振り返ると、太田誠一衆院議員の「集団レイプする人は元気があるからいい」発言や、柳沢伯夫厚生労働相の「女性は産む機械」発言(肩書きはいずれも当時)を引き合いに出すまでもなく、男性政治家による女性蔑視発言は大小含めればこれまで枚挙に暇がない(ちなみにこの2人も自民党所属だった)。
「議場での品格」うんぬんは批判として不十分だろう。発言の場所が議場だったから問題なのではない。議会にふさわしいかどうか以前に、女性の人権に関わる問題であると思う。
うやむやにすれば、この酷い発言を黙認することになる。問題がここまで大きくなったからには、発言の主もこのまま黙ってはいられないのではないか。一刻も早く自ら名乗り出て、しかるべき処分を受けてほしい。
件の野次を叫んだ議員は、「生意気な女を黙らせてやった」と心の中で喝采を叫んでいるのだろうか。そして、一連の野次の裏にある時代錯誤的な女性蔑視の認識こそがまさに、塩村都議が訴えた問題の解決を妨げているということに気づいているのだろうか。(相)