平壌市民の暮らしあれこれ
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久しぶりの平壌は大小様々な新発見の連続である。4年ぶりなのでなおさらなのだろうが、ここ数年に限っては毎年訪れている人であっても来るたびに必ず何かしらの変化を実感できるほど、首都は変貌を続けている。
代表的なのが急ピッチで進む各施設の増改築や新しいレジャー施設の建設。国家建設の勢いを目に見えて感じられる一方で、人々の暮らしに視線を落とせば、街ゆく人のファッションや百貨店に並ぶ食料品、衣類、靴、化粧品などの生活必需品は、市民の生活における変化の一端を示してくれる。頻繁に朝鮮を訪れている人からすれば取るに足らないことかもしれないが、今回は暮らしの中の四方山話を。
「平壌の女性たちがおしゃれになった」とはよく聞いた話しだが、これまさに。市内を歩いている女性たちを見ると、ボトムスはスラックスのようなパンツと膝丈のスカートが大半でも、トップスのバリエーションは色・デザインともにかなり豊富になった。ネックレスにブレスレット、指輪などのアクセサリーの類もひと通り身につけている。
中でも驚いたのがピアスだ。NGだとばかり思っていたのに、普通につけている。一粒のものから揺れるピアスまで、女性たちはみんないろいろつけておめかししているのに、一つしか持ってこなかった(それもピアスホール維持のため)自分がなんだかちょっぴり惨めになった。
それは冗談として、ファッションにおいて最も顕著な変化は靴だと思う。ハイヒールやミュール、プラットフォームの靴を履いている女性は、「増えた」なんて次元じゃない。若い女性たちは、見る限りほぼ全員ハイヒール。しかも7センチ以上の。赤いスカーフを巻いた中学生と思しき女の子まで(!)。
それから日傘を差す人も増えた。朝鮮は日差しがとても強いので、浅黒い人が多いという印象だったけど、最近は美白志向? でも女性たちが差している日傘は大抵キラキラのレース仕様で、紫外線カットよりもファッション性の高いものが多い。日本に行くまでに、日焼け防止には真っ黒の傘がより効果的だと誰かに耳打ちしたい。
ローカル紙の広告で知った平壌第1百貨店の商品展示会にも行ってみた。
平壌第1百貨店は、国産商品を扱う国内最大のデパート。今回展示された1600種、340余万点の商品のうち70%が国産の商品だ。展示会なので通常営業のときよりも商品が多いのは当然だが、こんなにたくさんの国産商品を見たのは初めてだったので感動だった。
食料品の中では、とりわけ菓子コーナーが目を引いた。朝鮮のお菓子といえば沖縄の「ちんすこう」に似た焼き菓子のイメージしか持っていなかったため(情報が古すぎる)、これには驚いた。クッキーは多数あったし、チョコレートがコーティングされたパイのようなものやチーズ味のスナック、フルーツ味の飴などなど。パッケージもチョゴリを着た子どもが描かれた民族的なものからシックなものなど様々あり、朝鮮仕様のパッケージデザインにいっそう愛着が芽生えて、あれもこれも買いたくなった。
別の日に他の店に行った際に、何個か買った国産のお菓子はどれもシンプルな味で、甘いものが好きじゃない私には程良かった。中でも気に入ったのがゴマクッキー。クッキーの表面にぎっしりとのったゴマが香ばしくて美味だった。これは菓子類、パンなどの加工品で有名なソヌン食料工場のもので、包装も食べきりサイズで個装されているので保存もきく。
ただ、滞在している平壌ホテルの売店や各フロアの喫茶店に常備してある菓子類の多くは輸入品のため、国産の商品は外出しなければ手に入らないのが残念だ。
数日前には平壌市内のあるパン工場にも行ってきた。
この工場では20種類、250点のパンを生産しており、そのほとんどに食品添加物を使用していないため消費期限が3~5日と他の工場の商品に比べて短い。それでも回収率は5%未満とのこと。職員の一人が「平壌でパンの需要を独占する!」と豪語していたように、他の工場や企業所に負けじと、市民たちによりよいものを提供するため国産商品の改良を重ねる多くの労働者たちが、市民生活を底上げしていると感じた。ヘアスタイルが印象的(本人は気にしていた)なその職員は、うちの工場でつくったパンをぜひ食べてほしいと言って、ダンボールニつ分の大量のパンをお土産に持たせてくれた。消費期限、短いのに…(笑)。
最後に、W杯ネタの続きを。
朝鮮中央テレビでは開幕戦にはじまり、連日ほぼ全試合放映している。近年「スポーツ強国」を掲げてスポーツに注力する国の施策もあって、予想以上の盛り上がりだ。平壌駅では、大型スクリーンの周辺にいつも以上に多くの市民が群がって試合を観戦しており、さながらパブリックビューイングの雰囲気だった。私自身、W杯に寄せる関心は、「スペイン敗退したんだ、へー」くらいのくせに、あの人だかりの中で一緒に観戦できないものかと密かに目論んでいる。(淑)