東京・無償化裁判、次回は大法廷で!
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7月2日、62人の東京朝鮮高級学校生徒が起こした「無償化国賠訴訟」の第2回口頭弁論が東京地裁で行われた。開廷は10時。今回も42席を求めて290数人の同胞や日本市民たちが長蛇を列をなした。
霞ヶ関駅を降り、地上に登ると、無償化連絡会の長谷川和男さんの姿が。スンリ(승리=勝利)Tシャツを身につけ、道ゆく人々に幼い高校生たちが裁判を懸命に闘っている現状を訴えていた。
いつも元気一杯の森本さんにも再会。
「高校無償化」とは、具体的には就学支援金を支給することで、支援金の受給資格は生徒にある。
朝鮮学校のような外国人学校生が就学支援金を受給するには、学校の設置者が文科大臣の指定を受ける必要がある。
その外国人学校とは、(イ)本国の認定を受けた外国人学校(ロ)インターナショナルスクール(ハ)その他、文科大臣が高校に類する課程と認めるものの、3つ。
しかし、国は朝鮮高校を同校が該当する(ハ)に指定しなかったばかりか、自民党政権にいたっては「(ハ)の規定」を排除した。
東京朝高側は、この裁判で、(ハ)の削除は高校無償化法の趣旨を逸脱しており、(ハ)の削除は政治的理由で違法である、そして、東京中高が指定の基準を満たしている―という主張のもと、裁判を闘っている。
前回4月2日の第1回口頭弁論では、高3の男子生徒と高2の女子生徒(提訴時)が意見陳述を行い、この日の第2回弁論では、国側から第1準備書面の陳述と証拠が提出された。
国側の反論はお粗末なものだった。
国側は、朝高を対象にしなかったことも、(ハ)の規定を排除したことは違法ではないと述べたが、その主張を参考までに記す。
弁護団の資料によると、国側が提出した59ページの資料中、前半は高校無償化制度の解説で後半が原告への反論だったとのこと。国側の「反論」は要約すると以下。
①「適正な学校運営」の確証が得られないから(ハ)の指定をしなかった。
「朝鮮高級学校は、朝鮮総聯や北朝鮮から影響を受けているとの指摘があり、その関係性等により、適正な学校運営がされていることについて十分な確証が得られず、…在学生に対する授業料に係る債権に充当されないことも懸念されたため、文部科学大臣が…認めるに至らないと判断した」
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つまり、朝鮮高校は総聯から影響を受けているから、きちんと運営されていないかもしれないという推測でモノを言っている。「認めない」と言い切らない点が卑怯だ。そもそも総聯の影響を持ち出すことは高校無償法の精神から見ても、まったくの筋違い。他の外国人学校については、支援団体や本国との関係について、何ひとつ、問題にしていないのだから。
②もともと、「ハ」の指定ができなかったから、「ハ」を削除する。
「…朝鮮高級学校については、指定に係る審査の過程において指定の基準を満たすかどうかの審査に限界があることが明らかになり…他方、当時、同規定によって指定した一部の外国人学校(コリア国際学園及びホライゾンジャパン・インターナショナルスクール)以外に同指定による指定を求める外国人学校はなく、規定を存続させる理由もない…」
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審査するのが、国の仕事なのに、「限界がある」とは、なんとも意味不明。コリア国際学園やホライゾン以外にも、(イ)(ハ)に該当する外国人学校が出てきた場合は、どんな理屈を作るのでしょうか。
③疑われる根拠として、「産経新聞」などを引用
国は、「本件不指定処分に至る経緯」を記述するなかで、産経新聞や民団新聞、公安調査庁の報告書を多数引用した。これらの新聞記事などの内容が事実か否かについて判断を示さないまま、「朝高が総聯や北朝鮮と関係があり、…適正な学校運営がされていないと疑われる事情」や「総聯が朝高を利用して資金を集めていると疑われる事実」があると述べている。
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「事実」を持って闘うのが裁判の鉄則。
朝鮮学校をつぶそうという悪質な目的を持った新聞社の報道をもとに、自分たちの主張を固めようとしている姿勢には、「官僚の質もここまで落ちたのか」という声が聞かれた。
広島の無償化裁判でも、広島地裁の裁判長から、「国が無償化排除の根拠としている新聞報道について、これは報道だけの話なのか、または報道について立証し根拠を持ってしての話なのかをはっきりするように」との指摘がなされたが、被告国の「反論」は反論になっていない。
裁判を傍聴した東京朝鮮高校の女生徒は、「初めて裁判に参加しましたが、想像と違いました。日本政府の人より、私たちを応援してくれる弁護士がずっと多くて心強かった」と話していた。翌日から祖国への修学旅行に出かけるという女生徒は、「自分の目で見て感じたことを伝えられるよう、しっかり学んできます」とも。
2006年10月以降、朝鮮への船旅が日本政府の制裁により遮断されている。裁判後の報告集会で、慎吉雄校長から、旅費が85000円から21万円に跳ね上がり、保護者たちの負担が続いていると伝えられたが、制裁後の「9年間」にこうむった損害の大きさに、改めてため息が漏れた。
裁判後の報告集会では、無償化問題を訴えるため、スイス・ジュネーブで開かれる国連・自由権規約委員会に参加する朝鮮大学校生の紹介もあり、参加者を沸かせた。
朝高の時からずっとずっと声をあげ続けている生徒だ。
次回法廷は10月1日、11時から。東京地裁で一番大きい大法廷での開催が決まった。
支援者の思いがひとつずつ、実を結んでいる。(瑛)