朝鮮での食生活
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冷麺、タンコギ(犬肉)、チュオタン(どじょう汁)、ソコリタン(牛テールスープ)、ノットゥチヂミ(モヤシのチヂミ)、カンネンイクッス(トウモロコシのうどん)、松の実のおかゆ、ハマグリのアルコール焼き、マツタケ…
上記は朝鮮に滞在していた4ヵ月間に食べたものたち。こう並べるとなかなか贅沢しているように見えるが、実際、食生活は充実していたと思う。
基本的に昼夜の食事はホテルの食堂でとったが、外食も多かった。昼夜と書いたのは、朝食はもともととらないからで、食堂のウェイトレスには何度も叱られた。「どうして食べないんだ」「毎朝寝坊しているのか」。あげく「出席表をつくりますよ!」とまで。そこまできつく言われても行かなかった私は、今思えば罰当たりだ。
過去の訪朝では決まって痩せて帰ってきたが(食生活ではなく、タイトなスケジュールによるもの)、今回は滞在2ヵ月を過ぎたあたりから、太り始めた。
それもそのはず、宿泊してる部屋は3階で平壌支局の事務所は5階なので、通勤はドアトゥードアで2分くらいだし、移動はすべて運転手付きの車。1日の消費カロリーが極端に少なかったからだ。
これではいかんと、大同江の朝の散歩を始めたのが4ヵ月目(遅い)。初日に張り切って、30分間競歩したら、汗もかいて爽快! ごはんもおいしい!と手応えを感じるも、翌朝筋肉痛(それも過度の)になったので、自分で自分に驚いた。
話は食べ物に戻り、冒頭の料理の中でダントツ摂取量が多かったのが、冷麺。優に30食以上は食べたと思う。
平壌の人たちはとにかく冷麺が好きで、一緒によく食べた。滞在していたのは春から夏にかけてなので、季節も手伝ってか、と思いきや真冬でも同じように食べるのだとか。
向こうでは冷麺ではなく「クッス」と呼ぶ。「우리 시원하게 국수 할가?」(さっぱりと、クッス食べようか?)といった具合に。
平壌ホテル、解放山ホテル、高麗ホテル、玉流館、アリラン食堂、大劇場食堂などなど、いろんな場所で食べたが、私はやっぱり玉流館の冷麺が一番美味しいと思った。これにはガイドのYさんも同意見。
朝鮮で食べた珍しい料理といえば、인조고기밥だ。日本語に直訳すと「人造肉ごはん」となる。
写真がないのが残念だが、日本のいなりずしに似た料理で、揚げではなく大豆で作った衣にごはんが巻かれている。味は淡白で、ヤンニョムをたっぷりぬって食べる。
ちょっと怖いこの名前の語源は、苦難の行軍の時代に遡る。社会主義の崩壊や相次ぐ自然災害などに見舞われ、あらゆるものが不足し、食糧事情が困難だった頃、肉に替わって大豆で栄養をとろうと作られた料理だそうだ。その頃に比べて食糧事情が格段に改善された今も、この食文化が残っており、인조고기밥のほかにも、大豆を揚げたおつまみのような料理もあり、味付けも各家庭ごとに異なる。
そんなこんなも含め、私が一番気に入った料理が、ハマグリのアルコール焼きの締めで食べられるおかゆだ(写真)。今もたまに、ハマグリの出汁とゴマ油の芳ばしい匂いを思い出しては、食べたくなる。(淑)