「ありがとうございました」と言われない
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締切前になると、編集部が戦場になるのは毎月のこと。そして夜遅くまで作業することになるのも毎月のこと。
当然、晩御飯も遅くなる。こういう日は家に帰って作るのも面倒なので、手っ取り早く外食で済ませている。
残業後、よく行くのが近所にあるチェーン店の定食屋。その店で最近、気付いたことがある。
食べ終わって店を出ようとする時、決まって店員に「ありがとうございました」と言われないのだ。
自前に食券を買うタイプの店で、飯時になると結構な数の客が入る。店員が店を出る客に気付かない場合が多々ある。
自分も多分これだろうなとは思っているし、店を出るタイミングが悪いのかもしれない。
それにしてもあまりにも「ありがとうございました」と言われないのだ。
これが中々のショックというか、かなり寂しい気持ちになる。
なので過去に二、三度、店員が近くに来たと同時に席を立ちドアを開けたこともあったが、この時も何故か言われなかった。
…そんなに自分の存在が薄いのだろうか。そういう星の元に生まれてきたのだろうか。
もしかしたら、自分がドアを閉めて完全に外に出た後に「ありがとうございました」と言っている可能性もある。
それでも、本人に聞こえないのなら意味がない気もする。
自分はコンビニで「いらっしゃいませ、今晩は~」という店員に対し、声は出さずとも心の中でたま~に、「今晩は~」と返している。
けれど、「ありがとうございました」に関しては「どういたしまして~」と心の中で返したことはないな…と思った。
それほどマニュアル的な「お礼」
に慣れてしまい何も感じない様になっているのかも知れない。
話は戻って、昨晩もいつもの店に立ち寄った。
今日はちゃんと「ありがとうございました」と言ってくれるだろうか…。
ぼんやり考えながら、注文した定食に付いている冷奴に醤油をかける。
が、食べたらウスターソースだった。
「……」
ガクッと項垂れながら、ふと、自分は何しにこの店に来ているんだろう…と思った。
店員に「ありがとうございました」と言われたいがためにこの店に入っているのだろうか?
いやいや、単に「飯を食いに来ている」だけなのだから、いちいちそんなこと気にする方がおかしいんじゃないか…。
ウスターソースだって、案外冷奴と合うかも知れないじゃないか。
そう思いながら水を一気に飲み干した。店を出ると、やっぱり「ありがとうございました」と言われなかった。
(…そんな日もあるさ!明日締切だし!頑張ろ!)
そう思いながら、寒空を見上げたのであった。
心のこもった「ありがとう」が欲しい今日この頃。(麗)