東京無償化裁判・第6回口頭弁論
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東京無償化裁判第6回口頭弁論が5月20日14時から東京地裁大法廷で行われた。
204人が列をなし、法廷はいつものように満席。この春で原告の東京朝鮮中高級学校生は全員が卒業したが、33人の後輩たちがその意思を継いで参加した。
法廷では原告弁護団の準備書面3が提出された。
前回国側は、朝鮮高校を無償化制度からはずしたのは、「規定13条に適合すると認めるにいたらなかった」のが主な理由だと主張した。準備書面3はこれに対する反論だ。
東京弁護団の主張は一言で、国が朝鮮高校生を無償化制度から排除したことが、高校無償化法に反しているという点だ。以下、主張を整理する。
①13条の趣旨を確認
弁護団は、そもそも国が不指定の理由として、「規定13条」を持ち出してくることがおかしいと主張した。
規程13条とは、「…指定教育施設は、高等学校等就学支援金の授業に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない」というものだ。
弁護団は、この条文はあくまでも就学支援金が確実に生徒の授業料に充てられるかどうかについての制度的、客観的な審査のみであり、それ以上に「関係法令一般との適合性」といった主観的判断をすることは許されない」と法の趣旨を確認した。
国は以前の準備書面で、「国民の租税負担によって授業料の負担を軽減するにふさわしいものであると確認できることが必要だ」―などと主張。朝鮮学校に国民の税金を出すことが適当ではない、といわんばかりの主張をしている。
ここで、なぜ税金の使い道についての話がでてくるのか、疑問を持つ。
そもそも就学支援金は、各種学校認可を受けた外国人学校生徒が支給対象で、対象となる外国人学校の審査基準は高等学校に類する課程かどうかだけだ。教育内容は問わず、授業時間数などで決めることになっている。法の趣旨は脇に置き、論点をずらそうという魂胆が見え見えだ。
②朝鮮高校を不指定とした処分は審査会の意見を聴かずになされた
朝鮮学校の指定に関して国は、審査会の意見を聞くことが法律(文部科学大臣決定)で定められていたにも係らず、審査会の意見を聞かずに不処分とした。
朝鮮学校を念頭に置いた規定ハは、2012年12月に発足した第2次安倍政権が削除した。
弁護団は、朝鮮学校の除外は自民党政権発足時において既に決まっていたことが明らかであり、政権発足後に東京朝鮮高校の指定に関して新たな調査をしたり、改めて審査会の意見を聴くなどの検討を行った事実がなかったことも丹念に調べあげ、行政処分庁が法律で定められた検討会を無視した問題性について、最高裁判例をあげながら主張。国の不指定処分は政治的理由によると、論破した。
ちなみに国は政治的外交的理由ではない、と言い張っている。
③国の主張する処分理由は違法である。
弁護団は、「規定13条」を口実にした国の不指定処分が、高校無償化法の目的・趣旨に反している、と改めて主張した。国は朝鮮学校と総聯との関係を審査の対象としたうえで、審査を打ち切り、結果、不指定処分にしたが、これ自体が「他事考慮」だと喝破。他事考慮とは、本来考慮しなければならないことを考慮せずにことさら無視し、逆に本来考慮すべきでないことを考慮し、重視することをいう。
今回の準備書面で東京弁護団は、総聯や本国との関係を問題視する国の判断基準が間違っていることを、高校無償化法の趣旨に立ち返り、裁判官に正確に伝えることに心血を注いだ。
無償化法は、子どもの学びを支援するという「平等の原則」を定めた法律であるにも関わらず、朝鮮学校についてだけ、「排除の法律」として使おうとしている国の意図を浮かびあがらせた東京弁護団の主張は、すっきりと筋の通ったものだった。
閉廷後の報告集会では、弁護団による解説に続き、参加者との質疑応答に多くの時間が割かれた。
「仮に裁判に勝ったとき、朝鮮高校を取り巻く何が変わりますか?」とは、現役の朝鮮高校生の質問。補助金の支給再開を求める埼玉の保護者からは、「国民の血税を朝鮮学校への補助金に投入することに理解を得られないと支給再開を拒否する行政に対してどのように反論すればいいのか」など実践的な質問もあった。
裁判の見通しや弁護士費用についても、率直な説明がなされ、笑いもあふれる一体感のある集会だった。
佐野通夫さんや長谷川和男さんが韓国で朝鮮学校差別を訴えた活動報告もあり、「60万回のトライ」を成功させた練馬の日本市民からは、原告側に裁判支援金の贈呈もあった。
次回裁判は4ヵ月後の9月18日(金)13時半から101号法廷。
国側が反論の準備に2ヵ月半の時間を要請したことに法廷ではためらいも漏れたが、この4ヵ月を勝つための備えとしたい。(瑛)