「自分」を考える
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児童書「ぼくのニセモノをつくるには」が、なかなか面白い。
主人公は、けんたという男の子だ。宿題にお手伝いに部屋の掃除…。やりたくないことだらけのけんたはとっておきの策を考え付く。それはロボットに「ぼく」になってもらって、すべてのことを代わりにやってもらおう、というものだ。しかしさっそく購入したロボットにこう頼まれる。
「あなたのことくわしくおしえてください!」
けんたが最初に説明した「ぼく」とは、まず一般的なプロフィール(名前・生年月日・血液型・家族など)と体のパーツに関する解説(耳たぶが小さい・ブランコから落ちた時のかさぶたがある・手のひらがペトペトしている・頭が大きくて帽子がはいらないなど)だ。しかしロボットはしつこかった。「けんたくんらしさ」が分からないというのだ。仕方なしに、けんたは「ぼく」とはなにかについて考える。
30ページほどしかないが内容がぎっしり。ほとんどが「ぼく」について綴られる。
イラストもとてもユニーク。哲学的な内容を個性的なイラストが児童書らしく、視覚的に教えてくれる。ひとつひとつが細やかで可愛らしくて、つい吹き出してしまったり、知らぬ間に癒されていたり。
「ぼくは『たぶん人気者』」コーナーでは―
自分ではおもしろくてカッコイイ人気者のけんた。
弟から見ると、おもちゃを貸してくれないお兄ちゃん。
お医者さんから見ると、よく風邪をひく注射が嫌いな患者さん。
水泳の友達から見ると、平泳ぎだけ上手な友達。
宇宙人から見ると…?
などなど。
いろんなテーマでいろんな「ぼく」が語られるが、「おばあちゃんが いってたけど にんげんは ひとりひとり かたちのちがう木のようなものらしい。 じぶんの木の 『しゅるい』は うまれつきだから えらべないけど それを どうやって そだてて かざりつけるかは じぶんで きめられる…木の おおきさは どうでもよくて じぶんの木を 気にいってるかどうかが いちばん だいじ」。
結局は「ぼくはひとりしかいない」のだ。
けんたは最後にこう思う。
「ぼくって なんだろう…じぶんのことを かんがえるのって めんどくさいけど なんかちょっと たのしい気もする」(S)