朝鮮半島で一触即発の軍事的緊張
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朝鮮半島で軍事的緊張が高まっている。
今月4日、軍事境界線に沿って設けられた非武装地帯の南側で地雷が爆発、韓国軍の兵士2人が負傷する事件が発生。南側は、これを北側によるものだと断定し、拡声機で北側の体制を非難する放送を11年ぶりに再開した。北側は事件への関与を否定し、この措置に激しく反発。朝鮮人民軍前線司令部は15日、南側が軍事境界線付近で再開した放送による心理戦の中止を要求し、「応じなければ、心理戦の手段を焦土化するための軍事行動を全面的に開始する」と警告した。
韓国国防省は20日、北側からロケット弾による砲撃があったとして、報復として数十発の砲弾を撃ち込んだと発表。しかし、朝鮮人民軍最高司令部は同日、緊急報道を発表し、北側から砲撃があったとする南側の発表を否定した。そして、朝鮮人民軍総参謀部が「(韓国軍が)48時間以内22日午後5時(日本時間同5時半)に拡声器による宣伝放送を中止しない場合、強力な軍事行動に突入する」と軍事ホットラインで韓国側に通知した。
20日夜には金正恩第1書記が中央軍事委員会を緊急招集し、「21日午後5時(日本時間で午後5時30分)を期し、休戦ライン付近の前線部隊は完全武装した戦時状態に移行し、前線には準戦時状態を宣布する」という内容の最高司令官命令を下した。朝鮮外務省も同日、「全面戦争も辞さない」とコメントした。
北側が南側による宣伝放送の中止を要求し、応じなければ軍事行動に出ると警告していた期限である22日、北南双方は軍事境界線上にある板門店の韓国側施設で高官会談を開いた。北側は黄炳瑞・朝鮮人民軍総政治局長と金養建・朝鮮労働党統一戦線部長が、南側は金寛鎮・国家安保室長、洪容杓統一相がそれぞれ出席。双方の現体制下では最もハイレベルの会談となった。
日本時間の18時半に始まった会談は翌23日午前4時過ぎにいったん終了。同日午後3時半に再開し、このエントリを書いている24日未明の時点でもまだ続いている。協議は難航が予想されており、どのような結果が出るか予断を許さない。
朝鮮半島が日本の植民地支配から解放されて70年、6・15共同宣言発表から15年。節目の今年に北南関係で何か進展があるのではないかと期待されたが、双方の対立はいまだ続いているという厳しい現実を突きつけられている。付け加えて言うならば、朝鮮半島情勢の緊張の要因として、17日から始まり現在も行われている米韓合同軍事演習の存在を忘れてはならないだろう。(相)