70年ぶりに故郷へ戻った遺骨
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北海道各地に保管されていた朝鮮人強制徴用犠牲者115人の遺骨がこのたび韓国へ奉還された。
115体の遺骨は、太平洋戦争中に朝鮮半島で徴用され、北海道で炭鉱労働やダム建設工事などに動員される中で死亡した人々だ。朝鮮半島が日本の植民地支配から解放されて70年を経て、やっと帰国の途についた。
遺骨の奉還は、韓国と日本の市民らで作る「強制労働犠牲者追悼・遺骨奉還委員会」が計画したもの。同委員会の共同代表を務める浄土真宗本願寺派一乗寺(北海道深川市)の殿平善彦住職ら一行は今月11日に北海道深川市を出発して東京、京都、広島、山口などを経て、18日に下関港からのフェリーで韓国南部の釜山に到着。このルートは植民地時代に朝鮮人労働者が釜山で関釜連絡船に乗って下関に到着した後、日本を縦断して北海道に渡ったルートを逆にたどったものだ。総行程は約3500kmにおよび、一行が寄った各地では犠牲者の追悼集会が行われた。
そして20日、ソウルで合同葬儀が行われた後、遺骨は天安市にある望郷の丘に埋葬された。現地からの報道によると、葬儀には遺族約50人のほか朴元淳ソウル市長と市民、両国の宗教関係者ら約1000人が参列したという。
遺骨奉還委員会によると、このたび故郷に戻った朝鮮半島南半部出身者の遺骨は、
・本願寺札幌別院に残されてきた遺骨のうち71体
・旧三菱美唄炭鉱犠牲者のうち常光寺に安置されてきた6体
・朱鞠内雨竜ダム建設工事犠牲者で、旧光顕寺に安置されてきた4体
・旧浅茅野日本陸軍飛行場建設犠牲者で、浜頓別天祐寺に安置されてきた34体の計115体。
北海道には戦時下の動員により過酷な労働を強いられ亡くなった朝鮮人、中国人らの遺骨が仏教寺院や埋葬地に残されてきた。 1970年代から市民有志らの手によって犠牲者の遺骨発掘が始まり、遺骨を遺族に手渡す取り組みが続けられてきた。しかし、21世紀の現在も多くの朝鮮半島出身者の遺骨が日本各地に残され、故郷に帰る日を待ち続けている。今回、南半部出身者の遺骨は韓国に戻ったが、東京の祐天寺にある遺骨をはじめ北半部出身者の遺骨返還は手つかずのままだ。(相)