大阪・補助金裁判第16回口頭弁論
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大阪府と大阪市が府、市内の朝鮮学校に対する補助金を不支給とした処分の取消と交付の義務づけを求めた裁判(以下、大阪補助金裁判)の第16回口頭弁論が11月17日、大阪地方裁判所で行われた。
当日はあいにくの雨模様だったが、140人を超す傍聴希望者が地裁に詰めかけた。
このたび裁判所の構成が変わり、裁判長が異動となったため、今回、原告大阪朝鮮学園側の弁護団は「弁論更新における意見陳述」を行った。
はじめに意見陳述を行った丹羽雅雄弁護団長は、朝鮮学校が歩んできた歴史をたどりながら、国際人権諸条約を批准しているにもかかわらず国や地方自治体がヘイトスピーチなどの差別的事象を率先して助長していると批判。2010年、「高校無償化法」の適用対象から朝鮮高級学校のみを除外する流れを受けて当時の橋下大阪府知事が朝鮮学校に通う子どもたちとは何ら無関係な政治的問題をあげつらい、予断と偏見に基づいた新たな「補助金交付要件」を持ち出した事実を指摘した。さらに、朝鮮学園側がその要件を満たしたにもかかわらず、さらなる政治問題を持ち出して補助金を不交付にしたことは、「内なる国際化と多文化共生」という理念によって続いてきた補助金交付の精神を覆し、朝鮮学校で学ぶ子どもたちの教育権を脅かし、学校の存在自体を危機的状況に陥らせていると指摘した。そのうえで丹羽弁護団長は、「容易な行政裁量論に陥ることなく、公正かつ適正に審理され、判断」するよう裁判官に求めた。
続いて、普門大輔弁護士が朝鮮学校への補助金交付の経緯などの事実関係について述べた。普門弁護士は大阪が「在日外国人教育については、異なる文化、習慣、価値観等を持った児童・生徒が、互いに違いを認めあい、本人のアイデンティティを保ちながら自己実現を図ることができるよう、ともに生きることのできる教育を進める」ことを指針として示しているにもかかわらず補助金不交付に至った経緯を説明した。
本訴訟の法律上の論点について陳述を行った木下弁護士は、地方自治法や憲法、私立学校法などに照らし合わせながら、朝鮮学校に対する補助金が単なる「私法上の贈与契約によって交付される」ものではなく、対象者に「権限」が与えられ、地方自治体側に「義務」が生じるものだと指摘。交付の根拠となる「法令」があることから「公法上の法律関係」であり、不交付は「政治的理由による狙い撃ち」とのべた。また、不交付が国際人権法にも違反していると主張した。
今回の口頭弁論では、裁判長から朝鮮学校の実情を撮影した映像を法廷で上映することが確認された。
この日、法廷の傍聴席には社会見学の一貫として裁判所を訪れた生野朝鮮初級学校の6年生児童たちの姿もあった。子どもたちは裁判終了後の報告会にも参加。原告側弁護団に感謝の言葉をのべた後、寄せ書きの色紙を手渡した。
裁判はいよいよ最終局面を迎える。来年の年明けからは人証も行われる見込みだ。
次回期日は来年2016年1月21日、11時30分開廷となっている。(相)