論点は、規定ハの削除―無償化裁判、東京は第8回、大阪は第14回口頭弁論
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東京朝鮮中高級学校生62人が高校無償化への差別なき適用を求めた、東京無償化裁判第8回口頭弁論が12月8日、東京地裁で行われ、同校保護者、日本人支援者ら155人が列をなした。抽選に外れた人向けに学習会も行われた。
この日は、前回国側が提出した第4準備書面に対する反論として、原告側が準備書面4を提出し、喜田村洋一弁護団長と李春熙弁護士が陳述。
弁護団は、国が不指定処分の理由としていた2つの理由(①規定ハの削除②審査の結果、本件規程13条に適合すると認めるに至らなかったこと)のうち、後者にだけ焦点があたるのは実態にそぐわないとして、「自民党政権発足の時点ですでに不指定にすることが決められており、そのために規定ハを削除したことが本質。規定ハの削除こそ違法だ」と訴えた。
また、朝鮮高校の指定の可否を検討する審査会の審査において、規定13条に違反する事実は何ら確認されなかったとして、「13条に関する審査としては、認可権者である所轄庁(東京都)を通した調査・確認のみが予定されていた。結果、東京中高には法令違反が認められなかった。国が述べていることは事実ではない」として、国が13条違反の理由として持ち出している総聯や朝鮮本国との関係は審査基準に直結する問題ではないとして、審査会資料を証拠として提出した。
とくに喜田村団長は、「本裁判では規定ハの削除が争点になる」と指摘。薬事法関連の最高裁判例をあげながら、国が朝高排除を目的として、規定ハを削除したのは無償化法の趣旨を逸脱したもので、被告は、関連する書面をきちんと提出してほしいと訴えた。
裁判後、参議院議員会館で報告集会が行われ、福島瑞穂参院議員、全国大会出場を決めた同校ラグビー部の選手や保護者たちが登壇し、思いのたけを語った。
保護者のカン・スンリさんは、「(花園出場は)本当に長い道のりだった。日本政府の無償化差別、補助金も凍結する自治体の卑怯な差別に負けることなく、子どもたちは、ひたむきにがんばってきた。まともなトレーニング施設もない厳しい経済状況の中、保護者たちは身を削って子どもを育ててきた。2020年オリンピックが開かれる東京で都代表として出場する学校を補助金から排除するというのもこっけいな話だ」と淡々と語っていた。
「裁判があったからこそ、3年間がんばってこられた。後輩たちに重い荷物を残すが、がんばっていきたい」と決意を語っていたのは東京朝高3年のHくん。
田中宏・一橋大学名誉教授による講演も行われた。田中名誉教授は、新しく就任した馳浩文科大臣に伝えたいメッセージだとして30分話をされた。
まず、「無償化差別は今までになかった新しい差別だ」と喝破、国が朝鮮高校はずしをしたことで、町田市が防犯ブザーを支給をやめようとしたり(2013年3月)、地方自治体が補助金を止めるなど、影響が大きく広がっているとして、「上からの差別と下からの差別が呼応している」と深刻な状況を伝えた。日本の植民地責任を問う裁判を多数支援してきた田中名誉教授は、国が本裁判で出してくる証拠のうち、原告が出したものと同じものがあるとして、役人が真面目に仕事をしていないことにあきれたとも。
裁判を取材しながらの帰り、東京朝鮮高校生裁判ニュース第7号に載った李春熙弁護士の文章に思いが重なった。
「…この裁判では、憲法や国際人権法、在日朝鮮人の歴史や民族教育の意義について、裁判上の主張としては大きく展開していません。見ようによっては『物足りない』ものに見えるかも知れませんが、国のやったことは憲法や国際人権、歴史的経緯に触れるまでもなく違法であるということを裁判官に伝えることが絶対に必要だと信じて、期日を重ねています。そしてその度に、裁判官の職業的良心が感応していのではないかという着実な手ごたえを感じます…」
今回、傍聴に訪れた人は200人を下回った。次回期日は3月2日(水)15時から。社会の関心が裁判の行方を左右する。まずは現状を知っていただきたい。
また、大阪の無償化裁判第14回口頭弁論も9日に行われ、詳細な報告が、ホームページhttp://www.renrakukai-o.net/に載っている。こちらもぜひ!(瑛)