演劇「震~忘れない~」を観て
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東日本大震災をテーマにした演劇「震~忘れない~」(Unstoppable Film PRODUCE、脚本・演出:鄭光誠)。今月20日から24日にかけて計10回、東京・池袋にあるシアターグリーンBOXinBOX THEATERで上映された。
開始早々起きる大地震。耳を塞ぎそうになるくらい大きな音が体に響いて、地震と津波の恐ろしさを感じさせる。
作品は、震災が起きたときとその後に被災地で何が起きていたのかを、さまざまな立場から伝えていた。
大切なものをすべて失った被災者の絶望、どうにか力になろうとする人たちの無力感と葛藤、精神的ダメージ。被災者とボランティアに訪れた人との間に起きる擦れ違い。同時に、確かに存在した「思いやり」「助け合い」。
脚本を手掛けた鄭光誠さんも出演者たちも、被災地出身ではない。食べ物にもモノにあふれた環境で、喪失感、虚無感、孤独感をいかに表現するかに、なによりも苦心したという。鄭さんは去年3月頃から被災地の人々の声を拾い、そこで聞いた話や言葉を脚本に反映した。また「助け合いの場がそこにあったのでは…」と感じ、その思いを作品に込めたという。
「人間が1人で生きられる所なんてない。今死にたいと思っている人がいたら、生きようと思ってほしいし、そんな人がいたら、誰かが声をかけてあげてほしい。『震災だから』『被災地だから』ではなく、あらゆるものに置き換えられる」(鄭さん)
震災をただ「怖い」と受け取るのではなく、しっかり向き合い、決して忘れてはいけないと改めて感じた。(S)