大阪補助金裁判 原告側証人尋問
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大阪朝鮮学園が原告となり、大阪府・市の補助金不交付処分の取り消しを求めた訴訟の原告側証人尋問が19日、大阪地方裁判所で行われた。
法廷に立ったのは、原告側の鑑定意見書を執筆した大学教授、朝鮮学校児童・生徒の保護者、卒業生、現職の朝鮮学校教員。大阪朝鮮学園理事長の5人。
朝鮮学校保護者を対象としたアンケート調査を実施した大阪市立大学の伊地知紀子教授は、アンケートの結果をもとに執筆した鑑定意見書の特徴的な内容について説明。国による高校無償化からの除外と府・市による補助金不支給は、学校や保護者の経済的な負担を増やしているのみならず、日本社会が公に在日朝鮮人を差別してもいいのだという認識を人々に与えている、このたびの補助金支給をめぐる府と市の場当たり的な対応は、国際人権規約や人種差別撤廃条約、子どもの権利条約などで禁止されている、特定の民族やルーツを持つ人々を差別することにつながり、在日朝鮮人の生存権侵害にあたる、などと述べ、裁判所がこの件について公明正大な判断を下すことを求めた。
東大阪中級学校オモニ会副会長の植田希世子さんは、朝鮮人と日本人の親の間に生まれた子どもたちに、日朝両方の文化や歴史を理解し、視野の広い人間に育ってほしいとの願いから、子どもたちを朝鮮学校に通わせていると述べた。そして、補助金の不支給は差別であり、怒りを感じると胸のうちを吐露した。
昨年3月に大阪朝鮮高級学校を卒業し、現在は朝鮮大学校で学ぶ柳愛純さんは、勉強だけではなく、友人たちや先生方との出会いを通じて朝鮮学校が自分の居場所だと思えるようになったと、自身が送った学校生活を振り返りながら答えた。
生野朝鮮初級学校教員の文貞淑さんは、子どもたちに母国語をしっかりと学ばせ、日本学校以上の学力を身につけさせ、自分のルーツしっかり知ったうえで卒業後に広く社会に貢献できるような人間に育てることを心がけていること、経済状況が悪い中でも朝鮮学校に通わせる保護者たちの思いや、子どもたちが逆風の中でもはつらつと学び、卒業後はさまざまな分野で活躍していることなどについて述べた。そして、民族教育は日本で朝鮮人が生きていくかぎり必要であり、絶対に守っていかなくてはいけないと話した。
最後に証言台に立った大阪朝鮮学園の玄英昭理事長は、大阪府下の朝鮮学校について、教育理念にはじまり、カリキュラムやクラブ活動、生徒たちの進路、学校理事会や人事、財政、補助金の使い道、不支給の経緯、そして不支給の理由とされた平壌での「迎春公演」参加にいたるまで丹羽雅雄弁護団長の尋問に答えた。玄理事長は、朝鮮学校は生徒たちを民族的アイデンティティと国際感覚を兼ね備えた人間に育てる場所であることに加え、同胞コミュニティの拠点であり異文化交流の場でもあると、その存在意義を強調。補助金不交付によって民族教育が否定され、学校側や保護者の経済的負担や不安が増しているとしながら、子どもたちの学ぶ権利は万国共通のものであり、平等に保障されるべきだと述べた。
一方、25日には被告側の証人尋問が行われ、朝鮮学校の補助金不支給問題に直接携わった府と市の担当者3人が出廷した。
「いま、当たり前であるべきことが当たり前ではなくなっている、なぜ朝鮮学校が仲間はずれにされなければいけないのか。目をそらさず、私たちの姿をしっかり見てほしい―」。大阪朝高卒業生の柳さんの言葉が印象に残った。
このブログを書いている25日、在日特権を許さない市民の会(在特会)のメンバーらによる暴言などで業務を妨害されたとして徳島県教職員組合と元職員の女性が在特会とメンバーら10人に約2000万円の損害賠償を求めた裁判の控訴審判決が言い渡された。判決は在特会による行為を「人種差別的思想の表れで違法性が強い」と認定、1審判決が命じた賠償額のほぼ倍となる約436万円の支払いを命じた。事件が起こったのは2010年の4月。この「当たり前」の判決が下されるまで6年かかった。京都朝鮮第1初級学校襲撃事件では5年だ。
一連の高校無償化、補助金裁判で「当たり前」の判断が下されるのはいつになるのか。(相)