広島無償化裁判/結審の日程決まる
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広島朝鮮初中高級学校の在校生・卒業生110人が原告となっている広島無償化裁判の第11回口頭弁論が4月20日、広島地裁で開かれた。
前回の口頭弁論で原告側は、①裁判官に学校を直接訪れ事実を確認してほしいとの検証申出、②校長、生徒、保護者、支援者、一橋大学の田中宏名誉教授の尋問申請を行っていた。今回の法廷でその必要性についての意見書を提出し、口頭でも強調した。
しかし、裁判長がいずれも却下したため、原告弁護団と傍聴席が一時騒然となった。
続いて、最終弁論と結審の日程が決まった。
今回の公判から裁判官の1人が交代したことにともない、弁論更新として、パワポスライド資料配布による訴状補足説明、原告側からの意見陳述が行われた。
意見陳述をしたのは、広島初中高在学時に無償化制度から除外され、卒業後の裁判で原告となった、同校の教員。学生時代に街頭活動に出たことや、後輩たちに同じ悔しい思いをさせてはいけないとの気持ちで原告に名を連ねたことなどを語った。
「教員として母校に戻ってきても未だにこの問題と関わっていかなければいけない事がとても悔しくてたまりません。あと何回、幼い妹たちがチョゴリを着て街頭に立ち、ビラを配り、署名を集めればいいのでしょうか。あと何年、朝鮮学校の学生たちが原告となり、裁判を闘えばいいのでしょうか」
そして、この問題が日本社会の問題でもあると裁判所に強く訴えた。
当日、被告(国)からは準備書面8が提出されたが、「先に述べたとおり」の連続で、具体的な反論などは見られなかった。
原告からは準備書面11と、108件に及ぶ陳述書が提出された。
前回、被告は、同校を含む朝鮮高校について、規程13条(適正な学校運営)の基準に適合すると認めるに至らないという判断は不合理ではないと主張し、その証拠として、大阪市立大学の伊地知紀子教授の鑑定意見書を強引に引用した。
この意見書は、大阪府内にある朝鮮学校全10校(初・中・高)の保護者に実施したアンケートを元に作成され、大阪補助金裁判で原告側が提出したもの。保護者らの生の声を通して、朝鮮学校における民族教育の意義を主張している。
ところが被告は、保護者らの多様な意見から自分たちに都合のいい記述だけを大量に引用し、「かえって文部科学大臣の判断は不合理ではないことを裏付けるものとなっている」などと言い張った。
今回の原告の準備書面では、これに対し、強く批判した。
「アンケートを自己に有利な部分だけをつまみぐいして準備書面への引用および証拠提出(一体となっている意見書を出さずアンケート部分だけ提出)するという法律家としてあるまじき行為をおこない、裁判官の誤解を招かんとしている」
原告はあらためて、伊地知紀子教授鑑定意見書とその基礎資料を提出した。保護者らが朝鮮学校を選択する理由が、「民族性や母国語の習得」といった朝鮮学校でしか得られないものがあるからだということや、無償化制度からの除外により経済的負担に拍車がかかっていることなどを明らかにした。
公判終了後の報告会では、申出がすべて却下され結審の日程が決まったことに対するさまざまな意見、今後の予想などが語られた。
次回の最終弁論は7月13日(13:30~)。原告から最終準備書面、学校紹介DVDが提出される予定。
結審は9月14日(13:30~)に行われる。(S)
※写真=広島初中高提供