はらっぱのおはなし
広告
イオ6月号で紹介した、「はらっぱのおはなし」(松居スーザン、あかね書房、1996年)という児童書がとても良かったので紹介したい。
天気のいい夏の午後、はらっぱの真ん中に寝転んでぼんやりしていると、虫たちの話し声が聞こえてくる…。
物語は全部で10編。ねむくないコオロギ、オニグモじいさん、わるわるバッタ、ロマンチックなアリのぼうや、モンシロチョウに心揺れるくわはちなどなど、個性的な主人公が登場し、虫たちの1日が綴られる。愉快で、前向きで、元気の出る話もあれば、少し胸が痛くなるような話も。
登場人物やストーリーは、どこか身近なものにも感じる。人間の世界で見られる何気ない光景が虫たちによって再現されているようで、読み進めていくと「虫の話」ではないことに気付く。
そして一番に感じたのは、どの物語も優しさにあふれているということ。見返りを求めない、自然で素朴な優しさだ。
是非、機会があれば読んでもらいたい。
これまで、イオの児童書紹介を2回担当した。図書館や書店の児童書コーナーに関心が行かなくなって久しいが、改めて棚に目を通すと、面白そうな本がたくさん並んでいる。
子どもが喜ぶようなイラストや仕掛けにも感心するのだが、なにより内容の深さに驚くことが多い。大人が読むからこそ感じるのか、なにかと心を正される。
以前、捨てずに家に残してあった絵本を取り出してみた。幼い頃、繰り返し読んでいたお気に入りの作品だったが、今になって読むとまったく違う話が見えてきてびっくり。
忘れた頃に、また読んでみよう。(S)