「舞台裏」を知ることは楽しい
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数日前、パティシエをしている同胞を取材した。“パティシエ”という響きからしてなんだか格好いいし、働いている姿を想像しても、とてもおしゃれで華やかなイメージがある。
しかし、実際はかなりの重労働だ。体力のいるハードな職だとは聞いたことがあったが、現場の生の声を聞くと想像以上のものだった。
長時間の立ち仕事で、腰への負担も大きい。酷い手あれにも悩まされるし、火傷をすることも一度や二度ではない。
そして何より、忙しい。ケーキのシーズンといえばクリスマス。店頭には数々の可愛いケーキが並び、見ているだけで癒されてしまうが、その裏側では、パティシエさんたちが睡魔と闘いながら死に物狂いで働いているのだ。睡魔に襲われ、気が付けばケーキに手をぶち込んでしまっていた…なんてことは「あるある」だそうだ。
街中からクリスマスモードが消えても、パティシエの世界では嵐が収まらない。お正月、バレンタインデー、ホワイトデーと、忙しさが続く。いろいろな意味で体力勝負だ。
こんな熾烈な世界を知ってしまった以上、今後ケーキを食べる時は、この「裏側」を思い浮かべずにはいられないだろう…。取材を終えて、ひしひしと感じた。
今回のパティシエに限らず、取材を通してさまざまな職業の人の話を聞く機会がある。その職業は自分の身近なものを作り上げていることも少なくない。自分の日常の一つひとつに対して、少しずつ「舞台裏」を知っていく過程のように感じられる。世界が少し変わって見えると、取材が本当に楽しい。
たとえ取材がきっかけでなくても、物事に想像力を働かせながら過ごしていかなくてはとも思うようになった。(S)