「不当な支配」は見当違い
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今週の月曜日、愛知無償化裁判の第18回口頭弁論が行われました。約160人が名古屋地裁前に集まり、変わらない関心の高さをアピール。私がこの取材に訪れるのは10回目になりましたが、来るたびに新しい支援者が増えているのはすごいことだと思います。
法廷では書面のやり取りと今後の進行についての話し合いが行われました。今回は陳述などはなく、10分ほどで閉廷。参加者たちは報告集会へ向かいます。
報告集会ではまず、内河惠一弁護団長があいさつしました。「この度は日本教育法学会の会長である成嶋隆さんという重鎮の方に意見書を書いていただき、それを提出した。意見書をもとにこちらの主張をまとめたら、弁護団としての主張は一通り終わる。一つの区切りだ。今後は証人尋問と裁判官の朝鮮学校への訪問準備を進めていく予定」。弁護団の主張が順調に進んでいることを伝えました。
続いて裵明玉弁護士が、成嶋隆さんの意見書の内容についてわかりやすく報告。はじめに導入として、「この裁判では非常に新しい論点が登場した」と解説を始めました。
「国は、『朝鮮民主主義人民共和国ないし総聯が、朝鮮学校の教育に対して不当な支配をしているため、国のお金が公正に使われるかどうかわからない。だから就学支援金は出せない』ということを言ってきた。こういった中で、『民族団体あるいはその祖国と民族学校の関係性をどう捉えるか』、という新しい主題がクローズアップされました。裁判官も法の専門家ではあるが、教育法のジャンルについて熟知しているわけではなく、国の主張がおかしいかどうか、すぐには判断しにくい」。―これに対して専門家の意見を出そうというのが弁護団の目標だったそうです。
意見書は30ページにもわたります。以下が、集会で説明された概要です。
・在日朝鮮人の民族教育の権利について
→在日朝鮮人の歴史的特殊性から見て、日本国民の場合と同等のレベルで保障されるべき。民族教育の権利については国際人権条約などの裏づけもあり、今すぐにでも保障されなければならない。
・「朝鮮民主主義人民共和国と総聯が朝鮮学校を支配している」という国の論法のおかしさについて
→「不当な支配」禁止法理というのが教育基本法には書かれている。どうしてこのような条文があるかというと、戦前に日本が軍国主義へ向かった時、教育の自由が失われ、国民を軍国主義的な愛国者として戦争に動員させるために教育が使われたという過去があるから。このように公権力が教育の現場を不当に支配するということが二度とあってはならないという思いが込められている。
これまでに「不当な支配」の条文は、学校教員たちへの「日の丸・君が代」の強制や養護学校での性教育に対する議員の介入など、日本の公権力が教育に介入した場合にのみ使われてきた。日本は在日朝鮮人をはじめとする民族学校への権利保障をしてこなかったため、民族団体自らで学校を運営してきた。そこに「不当な支配」という論点を持ってくること自体が非常におかしい。
また国が証拠として提出している「産経新聞」についても、このような偏見に満ちた事実の裏付けもないようなものを国が根拠にしていること自体が甚だおかしい。
このように、教育法のスペシャリストが国の不当性をばっさりと指摘しています。聞けば聞くほど、国がどれほど見当違いなことを言っているかというのが、とてもよくわかりました。むしろ、自分たちの主張を通すためによくこんなものまで引っ張り出してきたな…と呆れてしまいました。過去の教訓として作られたはずの条文を、このように図々しく利用して恥ずかしくないのでしょうか。この意見書の内容、そして弁護団の主張が、しっかりと裁判官に伝わってほしいです。
報告集会ではほかに、朝鮮学校での生活をまとめた映像が流されました。朝高生たちの明るい姿に、参加者たちは顔をほころばせていました。また高級部2年生たちがマイクアピールをしたあと合唱を披露し、諦めずに前進していこうとの決意を改めて支援者たちに伝えました。(理)