ふるさとへの思い
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イオ8月号が先日、刷り上った。数日前のエントリにもあったが、今月号の特集は「もうひとつの私のふるさと」だ。
在日1世の場合、고향(コヒャン、ふるさと)とは生まれ育った朝鮮半島の郷里を指す。2世以降の人々も、一般的には自分のルーツがある土地(1世の祖父母たちが生まれ育った場所)のことを故郷と呼ぶ。ただ、さまざまな理由によって、本来の意味での「ふるさと」に加えてまた別の場所を「ふるさと」と思う人々も多い。自分の故郷について考えることは自分自身のアイデンティティについて思索を深めることにつながる。さまざまな人々に「心のふるさと」「もう一つのふるさと」について語ってもらおう、という趣旨から企画した特集だった。
本特集では、2013年と14年の2回、「北朝鮮地域に残された日本人遺骨の収容と墓参を求める遺族の連絡会」(北遺族連絡会)による墓参訪朝に参加した熊本県在住の男性にも、生まれ故郷・朝鮮の思い出について寄稿してもらった。日本の植民地支配下にあった朝鮮半島の北半部で暮らし、第2次世界大戦での敗戦を前後した時期に亡くなった日本人は約3万3000人にのぼる。現在も2万柱を超える遺骨が現地に眠っているが、朝・日間に国交がないため遺骨収集は進んでいない。
当該ページの編集は私が担当した。80を過ぎた高齢の筆者から郵便で送られてきた手書きの原稿は、所定の文字数の3倍ちかくあった。筆者のさまざまな思いが込められた文章を、当人とやり取りしながら数日間かけて削って、短くして、まとめた。
完成した掲載誌を送ると、大変喜んでくれた。筆者のあふれるふるさとへの思いを少しでもくみとってあげられたのなら編集者として望外の喜びだ。(相)