広島無償化裁判第12回口頭弁論/結審の日程が先送りに
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広島無償化裁判の第12回口頭弁論が7月13日、広島地裁で行われた。
広島では前回の第11回口頭弁論で、9月14日に結審を行うことが決められた。しかし同じ法廷で、当事者である原告の証人尋問がすべて却下されたことから、裁判官の結審に対する懸念の声が上がっていた。
今回の法廷に先立ち、原告(朝鮮学園)側の弁護士は裁判官に面談を申し入れ、▼法律研究者による意見書2つの提出と、▼新たな原告の証人尋問を申請していた。裁判当日は、これらに対する裁判所側の対応が注目された。そのため会場にはいつも以上に多くの傍聴者が集まった。
裁判所はこの日、原告側が準備している研究者の意見書を10月末までに提出することを認めた。結果、9月14日には口頭弁論は行われるものの、予定していた結審は先送りとなった。
また法廷では、広島朝鮮初中高級学校を紹介するDVDが上映された。前回の口頭弁論で、学校を直接訪れ事実を確認してほしいとの検証を裁判官に申請していたが却下されたため、代わりに提出されたものだ。DVDでは学校設立当時の歴史、現在の授業のようすと教科書の紹介、児童・生徒たちのさまざまな日常が映し出され、同校が高等学校の類する課程であることを示すものとなった。
しかし一方で、原告の証人尋問は前回と同じように却下された。
今回、原告から第12準備書面、被告(国)からは第9準備書面が提出された。
原告は準備書面で、▼文部科学大臣が行った朝鮮学校に対する不指定処分が、審査会の最終意見を踏まえることなく独自で行われたものであり、手続き上違法であること、▼今年3月29日に文部科学大臣が地方自治体に出した、朝鮮学校への補助金見直しに関する通知が、高校無償化制度からの除外と同様、政治的目的で行われた不当な行為であることを主張した。
被告の準備書面では、▼文科大臣の朝鮮学校に対する不指定処分が正しかった、▼学校の適正な運営を原告側が立証しなくてはいけないなど、これまでの主張が繰り返された。
裁判では、同校オモニ会が中心となり集められた陳述書134件も提出された。当事者一人ひとりが自身の言葉で心境を綴ったものだ。
裁判終了後の報告会で、弁護団が裁判に対する現時点での見解や今後の予定について報告した。原告が準備している意見書を裁判所が受け入れたこと、法廷でDVDを上映できたことに一定の評価をした一方で、原告の証人尋問が再び却下されたことに対する懸念を示した。
裁判官の対応を巡って、引き続き懸念が広がっていることに対して足立修一弁護団長は、弁護団で今後の対応を検討したいとした上で、「どの裁判官でも原告を勝たせるしかないと判断するような立証を積み重ねていくこと」が重要だとのべた。
この日、2010年の徳島県教組在特会襲撃事件の被害に合い、今年4月に裁判で全面勝訴を勝ち取った原告の女性が、裁判を傍聴しに徳島県から訪れた。報告会では、6年間に及ぶ裁判の紆余曲折の日々を語り、「裁判で闘い続けることはとても苦しいが、声を挙げ続けない限り道は開かれないと思う。今後も共に勇気を出して頑張りましょう」と集まった人々を鼓舞した。会場から大きな拍手が送られた。
また、報告会のはじめには広島初中高の生徒たちが合唱を披露し開場を勇気付けた。
次回の第13回口頭弁論は9月14日(13:30~)、第14回口頭弁論は11月16日(10:00~)に広島地裁で開かれる。
第14回口頭弁論で原告は法律専門の研究者による意見書を提出する予定。結審はその後行われるが、日程はまだ決まっていない。(S)