国の法律違反を指摘/九州無償化裁判第10回口頭弁論
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九州無償化裁判第10回口頭弁論が9月29日に行われた。福岡地裁小倉支部には傍聴券を求め90人が足を運び、46の傍聴席が埋まった。
今回原告(朝鮮学園)が提出した第15準備書面では、被告の第6準備書面に対し再反論した。内容は、原告に適正な学校運営の立証を求める被告(国)の主張の矛盾点や、根拠なく朝鮮学校だけを疑う被告の主張が偏見に基づく誹謗中傷であるという点など、これまで繰り返し指摘してきたものだ。
さらに原告は第16準備書面を提出した。
被告はこれまで、朝鮮高校に就学支援金を支給していない理由のひとつとして「就学支援金が授業料へ充当されないおそれがある」と説明してきた。原告書面では、無償化法での法定充当の仕組みを考えると「無償化法は、学校の設置者による就学支援金の横領、あるいは第三者への流用などという事態を全く想定していない」ことが明らかだとし、被告の主張は無償化法を逸脱した暴論だと指摘。さらにこの主張が「無償化法に違反する」「不指定処分をする理屈を作り出すために必要不可欠なロジック」であると批判した。
被告が朝鮮高校を除外するもう1つの理由としてあげている規程13条(法令に基づく学校の運営を適正)については、無償化法が支給対象として定めている「高等学校等の課程に類する課程を置くもの」を逸脱した違法な規定だと主張した。
また第16準備書面では、「安倍自公連立政権による本件への対応は法的にもずさん極まりないものであり、それ故に、安倍政権の差別意識を如実に示すものである」とし、この安倍政権の差別政策を裁判所が厳しく断罪すべきだと訴えた。
原告は今回、学者による意見書3つを提出。次回の裁判でそれに基づく主張をする予定だ。原告が開示を求めていた文書に対する被告の回答書が提出されたため、これらを踏まえた反論も今後行っていく。
裁判終了後に裁判官の部屋で行われた進行協議では、今後の裁判の流れについて話し合われ、最終段階となる尋問についても言及された。尋問の時期は、引き続き書面を通して双方の主張が続けられた後、来年5~6月頃になる見込みだ。
原告が裁判官に対し学校訪問を要望していることに対しては、裁判官からはっきりとした答えは告げられていない。進行協議で原告は、学校訪問の必要性についても改めて強調した。
裁判報告会では、金敏寛弁護士がこの日の裁判と進行協議の内容を報告した。
また報告会前に行われたミニ学習会では、京都朝鮮第1初級学校襲撃事件のヘイトスピーチ裁判に携わった冨増四季弁護士が講演を行い、京都での裁判を通して見えてきた民族教育に対する考えや、差別社会とどう向き合い改善していけばいいのかなどについて話した。
第11回口頭弁論は、12月8日(木)14:00から福岡地裁小倉支部で開かれる。(S)