大阪無償化裁判 第15回口頭弁論、裁判は来年2月15日に結審
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大阪朝鮮高級学校(以下、大阪朝高)を高校無償化制度の対象としないのは違法だとして、大阪朝鮮学園が国を相手に無償化申請に対する不作為の違法確認と無償化の義務づけを求めた訴訟の第15回口頭弁論が10月14日、大阪地方裁判所で開かれた。裁判がいよいよ最終局面を迎える中、この日は原告側の4人が証人尋問に臨んだ。地裁には大阪府内の朝鮮学校関係者と児童・生徒たちの保護者、地域同胞、日本人支援者ら100人以上が傍聴に駆けつけた。東京、愛知、広島、福岡の各地で高校無償化裁判をたたかう弁護団の弁護士らも傍聴に訪れるなど、関心度の高さをうかがわせた。
裁判ではまず、大阪朝高の歴史と同校で学ぶ生徒たちの日常を撮影した約15分間の動画が上映された。
映像視聴後、証人尋問が行われた。証言台に立ったのは玄英昭・大阪朝鮮学園理事長と大阪朝高の元教員、卒業生、田中宏・一橋大学名誉教授の4人。
大阪朝鮮学園理事長は原告側代理人の主尋問に答えながら、大阪朝高の教育理念や教育内容などについて説明。朝鮮学校が朝鮮半島にルーツを持つ生徒たちの民族的アイデンティティの涵養に不可欠な存在であることを訴えた。さらには、同校が「日本社会や国際社会で活躍できる人材の育成」という目標を掲げながら、学業やクラブ活動で多くの成果を収め、卒業生もさまざまな分野で活躍しているとのべた。
玄理事長は、高校無償化制度によって国が初めて外国人学校の生徒たちの授業料を補助してくれる、やっと外国人学校も受け入れてくれるようになったと喜ばしく思ったが、政治や外交問題と絡めて朝鮮学校を就学支援金の支給対象から除外した日本政府の決定はまったく理解できないとのべた。そして、「すべての意志ある高校生が安心して学べる社会をつくる」という高校無償化制度の目的に照らして、朝高にも差別なく制度が適用されることを求めると訴えた。
続いて証言台に立った大阪朝高の元教員は、朝高の教育内容が日本の公教育と比べても何ら遜色なく、生徒たちの民族的アイデンティティ確立の面からも優れたものであることを自身の経験を基に語った。無償化制度については、「期待が大きかった分、失望も大きかった。生徒たちはなぜ自分たちが対象から除外されたのか、納得できる答えを得られず、それはかれらの中でいまだに疑問として残っている。生徒たちの問いに私自身も答えることができなかった。本来ならば受験勉強やクラブ活動など自分のために時間を使っていいはずの朝高生たちがなぜ何度も街頭に立たなければならないのか。まったく同じことが日本学校の生徒たちに降りかかってきたらどう思うのか」などとのべた。「無償化除外は生徒たちの心に生涯消えることのない大きな傷を負わせた」―踏みにじられた生徒たちの思いを、涙をこらえ声を震わせながら話す証人の姿が胸に迫ってきた。
3番目に証言した大阪朝高の元生徒(卒業生)は現在、朝鮮大学校の2年生。「無償化制度からの除外によって自分が受けた心の傷を後輩たちには味わってほしくない」という思いから証言台に立つことを決意したという証人は、朝大へ進学後も毎週金曜日に文科省の前で行われている高校無償化適用を求めるアクションに参加している。最後に、裁判官に向けて、「なぜ朝鮮学校が無償化制度から除外されて存在を否定されなければいけないのか納得がいかない。実際に朝鮮高校を見たうえで公正に判断してほしい」と訴えた。
最後に証言台に立った田中宏名誉教授は専門家の立場から、高校無償化制度からの朝鮮学校除外が場当たり的で、政治的意図に基づく差別政策だったとのべた。田中名誉教授は、外国人学校の教育内容はそれぞれの学校のバックグラウンドによって異なることから、制度適用の審査基準を授業時間数などの「外形的要素」に主眼を置いて定めるなど高校無償化制度は画期的なものだったが、朝鮮半島の政治情勢や日朝関係の停滞など政治的、外交的理由から朝鮮学校のみを制度から除外するためにさまざまな理由が後づけされたと批判。朝鮮学校のみが制度から除外された矛盾や不当性、手続き上の瑕疵などについて指摘した。そして、朝鮮学校に対する無償化適用問題は単なる定住外国人の人権問題ではなく、「過去の植民地支配」という歴史的責任にも関わる問題だとのべ、裁判所の公正な判断を望むと発言を締めくくった。
次回の口頭弁論期日は来年2月15日に決まった。その場で最終意見陳述が行われ、結審する。2013年1月の提訴から約3年半が過ぎ、裁判は判決に向けていよいよ大詰めを迎える。(相)