大阪補助金裁判、朝鮮学園側の訴え全面却下、ただちに控訴へ
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大阪府内で朝鮮学校10校を運営する学校法人大阪朝鮮学園が大阪府と大阪市を相手取って、府、市内の朝鮮学校に対する補助金を不支給とした処分の取り消しと交付の義務づけを求めた裁判(2012年9月提訴、以下、大阪補助金裁判)の判決が1月26日、大阪地方裁判所で言い渡された。
大阪地裁(山田明裁判長)は、補助金の不交付という府と市の決定は「裁量の範囲内」と認め、不交付の処分性に違法性はないとして原告の訴えを却下した。
判決は、補助金の関連法令や規則は「交付を受けられる法的な権利を認める趣旨ではない」と指摘。「(2012年3月に)全国から選抜された朝鮮学校生が北朝鮮の迎春公演に参加したとの新聞報道などからすると、学校の教育活動として朝鮮総聯の主催の下に迎春公演に参加したのではないかと疑う状況が生じていた」とし、「府が定めた補助金を交付する要件を満たしていると認めることができない」と結論づけた。
判決は、「ほかの学校との差異も平等原則には反するものとはいえない」「原告が補助金の交付を受ける法的権利を有していると認めることはできない」などとし、補助金が不支給になれば「生徒や保護者らの学習環境の悪化や経済的負担の増大などが懸念されるが、本件補助金が学校法人への助成という枠組みを前提としている以上やむをえない」と指摘。2010年3月、当時の橋下徹大阪府知事が大阪朝鮮学園に対し、特定の政治団体と一線を画すこと、特定の政治指導者の肖像画を教室から外すこと、などを補助金交付の条件として唐突に提示したいわゆる「4要件」についても、「教育の振興という行政目的の実現のため、大阪府の裁量により、学校教育法一条に定める学校に準じた教育活動が行われている学校に1条校に準じて助成の措置を行うものであることを明確にするため追加したもので相応の合理性があり、また原告を狙い撃ちにしたものとはいえず、手続き上の違法も認められない」などとのべた。
大阪朝鮮学園側は今回の判決を不当判決だと非難し、ただちに控訴する意向を明らかにした。
大阪地裁は原告側の訴えを全面的に退けた。判決は、一言で表現すれば、被告側の言い分を丸ごとなぞり、原告側の主張は一顧だにしないひどい内容だった。
判決の要旨を傍聴席で聞いたが、「本件訴え…を却下する」と裁判長が言った瞬間、私の周囲で小さな悲鳴が漏れた。判決言い渡しの後、傍聴席からは「人間の心を持って考えろ!」という声も上がった。
判決言い渡し後に行われた記者会見では、大阪朝鮮学園の玄英昭理事長が学園の声明
http://chosonsinbo.com/jp/2017/01/il-1094/を、朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪の長崎由美子事務局長が同会の声明http://chosonsinbo.com/jp/2017/01/il-1095/をそれぞれ読み上げた。
地裁の判決に強い憤りを覚え、怒りに体が震えた。決して容認することができない。国や行政・マスコミが一体となり、反朝鮮学校・反民族教育の風潮を醸成し、ヘイトスピーチ・ヘイトクライムがはびこるような社会が形成されようとしている今般、また、法治国家・先進国を謳っている日本において、裁判所までもがこのような判断を下すとは、夢にも思いませんでした。今も信じられません。
大阪朝鮮学園の玄英昭理事長は、時おり言葉を詰まらせながら会見に応じていた。
丹羽雅雄弁護団長は今回の判決について、子どもの権利や民族的マイノリティの学習権には一切触れずに、大阪府・市を形式的要件論で救済した不当判決だとのべた。
この日の夜に行われた報告集会では、弁護団による判決の解説、卒業生や保護者のアピール、韓国の支援団体からのビデオメッセージなどがあった。原告側は控訴する意向を明らかにした。裁判はまだ続く。参加者らは原告、弁護団、支援者が力を合わせ、最後までたたかうことを誓った。(相)