涙の更新弁論―愛知無償化裁判第22回口頭弁論
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昨日、愛知無償化裁判の第22回口頭弁論がありました。愛知朝鮮中高級学校が期末試験期間のため現役の朝高生たちは傍聴に来られませんでしたが、代わりにこの3月、愛知中高を卒業した生徒たちのほか、県内各地と周りの県からもたくさんの同胞と支援者たちが駆けつけました。冷たく強い風が吹く中、夫婦や親子で連れ立ってくる方、初めて傍聴に参加する方など名古屋地裁前には218人が集まり、問題への関心の高さをアピールしました。
今回は更新弁論が行われました。更新弁論とは裁判長が交代された時に行われるもので、この裁判が今までどのようなことを争ってきたかを総まとめして伝えられる機会です。
新しい裁判長は裁判の内容と経過について書類では引き継いでいるものの、原告の子どもたちや保護者の姿・声には実際に接していません。形式的にではなく、原告側の気持ちをしっかりと汲み取ってほしい、との弁護団の強い思いで実現しました。
法廷では、原告側弁護団が準備書面23と24を陳述。はじめに、愛知朝高出身の金銘愛弁護士が準備書面24の概要を陳述しました。
金弁護士は、朝鮮学校ができるまでの歴史的経緯を丁寧に説明し、この裁判を起こすに至った背景や思いについても振り返りました。そして、▼本件の被告の一連の行為は政治的意図に基づき行われたこと、▼本件不指定処分を含む無償化からの排除の一連の行為は人格権侵害に当たること、▼(以下同文)一連の行為は差別に当たること、▼…一連の行為は社会権規約違反であること、▼本件審査停止(不開始)の違法性、▼本件審査停止(不開始)及び審査遅延は行政手続法6条ならびに7条に違反すること、▼本件省令1条1項2号ハ削除の違法性、▼本件不指定処分の違法性―と、これまで行ってきた主張を改めて分かりやすくまとめ、裁判長に伝えました。
「裁判所は、その時々の世論の動向や政治的な風向きが考慮されるところではなく、裁判官が憲法と法律に基づき、その良心にしたがって公正な判断をする少数者の人権を守る最後の砦である。原告らは、日本の植民地支配の結果、日本で生活することを余儀なくされた朝鮮人の子孫であり、「在日朝鮮人」という特異な地位の故に多くの差別のもとで厳しい生活を強いられ、さらに今、原告らが直接責任の負いようもない拉致事件等により、人権の根幹ともいうべき学びの権利において不利益を強いられている。裁判所に対しては、その事実に対する十分な理解と洞察のもとに、本件被告の一連の行為に対し、憲法上の人権を侵害することにはならないのか、法に違反することはないのかを真正面から判断していただくことを切に求める次第である。」
書面の結びの部分、金弁護士は何度も息を詰まらせながら、涙を流して文章を読み上げました。いち卒業生でもある金弁護士の切実な訴えに、傍聴席からもすすり泣く声が聞こえました。
次に弁護団事務局長の裵明玉弁護士が準備書面23の概要を陳述しました。被告側は、無償化制度から朝鮮学校を除外したことについて、政治的意図はなく、ただ審査の基準を判断した上で朝鮮学校は就学支援金を適正に使える学校ではないと判断しただけ、という主張をしています。
準備書面23はこれに反論する内容となっています。裵弁護士は、新安倍政権が発足する前後の時系列とその間に出た報道、また被告側から提出された書面などを振り返り、無償化制度からの朝鮮学校除外は、政権発足前からもともと明確な政治的意図によって決められていたということを主張。被告側の発言の矛盾を強く指摘しました。
場所を移しての報告集会にも、たくさんの人が足を運び、会場は活気に満ちていました。抽選に漏れ傍聴できなかった人たちのために金弁護士と裵弁護士がそれぞれ書面の内容を説明すると、支援者たちは改めて両弁護士にあたたかい拍手をおくりました。
最後に、今後の進行計画についても話されました。次回、第23回口頭弁論は5月15日(月)、次々回の第24回口頭弁論は7月12日(水)に決まりました。早ければ今年のうちに証人尋問も行われるとのことです。地道に裁判と支援運動を続けてきた愛知でも、今年は大きな動きがみられそうです。
また、4月、5月に行われる講演会のお知らせも掲載します。
ご都合のつく方はぜひ参加してみて下さい。問合せは「朝鮮高校にも差別なく無償化適用を求めるネットワーク愛知」のHP(http://mushouka.aichi.jp/)から。
多くの方に、実際に足を運んでもらいたいです。(理)