東京無償化裁判第13回口頭弁論・結審は5月16日に
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朝鮮高校が無償化から外され8年目の春を迎えるなか、東京無償化裁判第13回口頭弁論が4月11日、東京地裁で行われ、98席の傍聴席を求めて216人が列をなした。
4月1日付けで裁判官が交替したことを受け、この日予定されていた結審は5月16日に延期された。交替した裁判官が記録を読みたいとの提案を受けた形だ。
①裁判官が交代、弁護団長が更新弁論
東京の裁判では、原告側準備書面7と、被告国側の最終準備書面が陳述された。また、裁判長の交替に伴い、喜田村洋一弁護団長が更新弁論を行った。裁判官に提訴から3年の間、朝鮮学校側が積み重ねてきた証拠と論旨を正確に伝えるためだ。
喜田村団長の弁論は、文科省の主張が虚偽であり、何より法律を侵している点を鋭く説いており、聞いていて爽快だった。
喜田村団長は、下村博文・文部科学大臣の発言などから、「(朝高)不指定の理由は政治的外交的配慮に基づくものであることは一点の疑問もない」と確認したうえで、しかしながら国はこの裁判の過程で政治的外交的配慮に基づいて行ったものだと主張していないと矛盾を突いた。また、「国は、規定ハの削除、ハの規定に基づく指定に関する規程13条に適合すると認めるに至らなかったということを不指定の理由に掲げた。しかし、この2つは不指定の理由とはいえない」と喝破し次のように国の虚偽発言を整理した。
「…ハの削除等は、この(朝高不指定)結論を導くために作りだされた。因果の列は、『拉致問題が進展しない→そのために不指定→そのためにハの削除等』なのであり、『ハの削除等→そのために不指定』ではない。ところが、国は、この因果の列を逆転させ、不指定処分とはいえないものを不指定処分の理由だと強弁している。これは、本件訴訟の中で不指定処分の理由を変更しているところからも明らかだ。文科大臣は(東京朝鮮学園への)不指定処分の通知の中で、『ハの規定を削除したこと』及び『規程13条に適合すると認めるに至らなかったこと』が不指定の理由であると明記している。…ところが、本訴に至り、被告国は『ハの削除』は不指定処分の理由ではないが、『念のため』、省令改正の事実を本件不指定処分の理由に含めて通知したという。国の処分の理由が2つから1つにされた、しかも文部科学大臣の通知において、最初に記載されていた処分理由が実は処分理由ではなかったということは、寡聞にして聞いたことがない」(喜田村団長の発言から)
②稟議の過程からしても違法
さらに喜田村団長は、稟議の過程を見ても国の主張が虚偽であることが明らかになっていると主張した。
「文科省では…『規定ハの削除に伴う朝鮮高級学校の不指定について』との件名の決済・供覧文書が作成されているが、朝鮮学校の不指定処分がハの削除に基づくものと理解され…決済されたことは明らかだ。
…証言の不合理性についてもう1点付加すると、文科省の証人は、省令ハの削除が上位法である高校無償化法の委任の趣旨に反することにならないかとの検討は、文科省の中で行ったことはないし、規則が法の委任の趣旨に反するとして裁判所で無効とされたことがあるということも知らないと証言した。…この証言のとおりであれば、文科大臣は行政手続法38条1項の規定をまったく無視し、遵守精神を欠いたことになる。国は、ハの削除が高校無償化法の委任の趣旨に反しないかを適切に説明できないことを恐れて、このような証言を得たとしか考えることはできない」(要約)
喜田村団長は以上を述べたうえで、「規定ハの削除による朝高排除は、政治的外交的配慮にもとづいてなされたもので、高校無償化法の下では違法」だと断じ、「私たちが求めているのは、国会が制定した法律の正当な解釈であり、これを行うのは裁判所だ。裁判所が通常の解釈をしていただきたい」と訴えた。
参議院議員会館で行われた報告集会では、2人の国会議員が激励のあいさつをした後、弁護団による口頭弁論の解説、田中宏一橋大学名誉教授による講演「日本の司法は、行政による『朝鮮学校いじめ』を糾すことができるのか」が行われた。
田中名誉教授は、2002年の日朝平壌宣言以降の朝鮮バッシング、その後に行われた朝鮮学校をめぐる裁判(枝川裁判、京都朝鮮学校襲撃事件裁判)を振り返った。
「拉致事件の時は、法務省によって朝鮮学校生への嫌がらせや脅迫をやめようと呼びかけたポスターが作られたが、まさかその後、政府は自身が嫌がらせをするとは思わなかっただろう」と国による差別を批判。また、「日本の民事裁判では朝鮮学校差別が違法とされた。アメリカでは入国禁止の大統領令に司法が待ったをかけたが、無償化裁判では公による差別に対して日本の司法がどのような判断を下すのかが問われている」と裁判の意義を述べた。
集会には、東京朝高から10人の生徒が参加、うち高級部3年の2人が発言した。
女生徒のCさんは、「文科省前の金曜行動に参加してきたが、人々の冷たい目線は何度みても慣れない。文科省の高く威圧的な建物、頑丈そうな窓まですべて怖かった。国という大きな力に、こんなにもひどい差別を受けていると思った」と不安を語りつつ、「先輩たちは自らが原告となった。先輩たちのおかげで裁判もここまで来ることができた。当たり前の権利を実現するため、屈してはいけない」と闘う意思をふりしぼっていた。
次回最終弁論は5月16日の11時から東京地裁103号法廷で行われる。判決は夏以降に出される見込みだ。7月には広島、大阪で無償化裁判の判決が出される。(瑛)
△今後の裁判日程
愛知無償化裁判第23回口頭弁論
5月15日(月)14:00~ 名古屋地裁
第24回口頭弁論
7月12日(水)14:00~ 名古屋地裁
東京無償化裁判第14回口頭弁論(結審)
5月16日(火)11:00~ 東京地裁
九州無償化裁判第13回口頭弁論
5月25日(木)14:00~ 福岡地裁小倉支部
広島無償化裁判判決言い渡し
7月19日(水)16:00~ 広島地裁
大阪無償化裁判判決言い渡し
7月28日(金)11:00~ 大阪地裁