千葉市長に考えてほしい
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千葉市が千葉朝鮮初中級学校に対する国際交流事業への補助金を停止した問題は、怒りとともに、ウリハッキョへの締めつけが、ここまで来たのかと思わされる事件だった。
朝鮮学校は日本の教育システムの中では正規の学校「1条校」ではないので学習指導要領に従う義務もなく、監督権限を持つ都道府県が教育内容に立ち入ることもない。市長がしていることは、法律を踏みにじる越権行為だ。
また、千葉の朝鮮学校と市とが積み上げてきた信頼関係を投げ捨て、ツイッターで世論を煽るやり方も自治体の首長として品格に欠けていると思わざるをえない。千葉市長の振る舞いを見ながら思い出したのは、大阪朝鮮学園への補助金を停止した橋下徹氏だ。かれは大阪朝鮮高級学校を訪問し、笑顔を振り撒きながら、その後、残酷にも補助金を切り捨てた。
1978年生まれの市長を見ながら、かれが民主主義や教育をどう学んできたのが、心の底から興味が沸いている。政府の考え方と同じように子どもを教えたいのだろうか。これから千葉市では、公立学校への統制が強化されるのだろうか…。
戦後、日本には私立学校が続々と生まれた。宗教法人系の学校も増えた。私立学校の増加は、日本の教育の幅を広げてきたし、教育の多様性を育んできた歴史だったはずだ。朝鮮学校の問題を言えば、時の政権が朝鮮学校を弾圧しようとしたときも、子どもの学ぶ権利と朝鮮学校の歴史を踏まえ、支援してきたのが地方自治体だった。政府と地方は明らかに違った。
私は教育勅語の問題も含めて、教育への政治介入に、なぜ日本市民の側から声が上がらないのが、不思議でならない。
じり貧で運営されている朝鮮学校をやり玉にあげて、時の為政者が何をしようとしているのか。今こそ、目をしっかり開ける時ではないだろうか。
千葉市の対応は日本の教育史に残る事件だろう。千葉市長は、子どもの表現の自由を奪い、教育への介入ができると思っているのだろうか。この愚かな対応をいち早く改めてほしい。
何より、子どもたちには萎縮してほしくない。李信恵さんの言うとおり、「あなたは何ひとつ悪くない」のだから。http://www.lovepiececlub.com/news/2017/04/28/entry_006561.html
5月21日には千葉朝鮮初中級学校で、千葉県国際文化交流イベント「フレンドシップフェスタ」が開かれるので、こんなときこそ、たくさんの人たちが同校を訪れて元気付けてほしい。
今、町田市が朝鮮学校への防犯ブザーを不支給にしようとしたときのように、日本の心ある人々が千葉市に抗議の声をあげている。それも全国各地から…。
市に意見を表明した在日本朝鮮人人権協会のキム・ウギさんが問題を的確に整理されていたので、ここに紹介します。(瑛)
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千葉市長への意見
このたび千葉市が、千葉朝鮮初中級学校の地域交流事業に支出する補助金について、昨年度分の約50万円の交付決定を取り消したことについて強く抗議します。
報道によれば、その理由は、昨年12月に同校が主催した美術展で展示された1000点を超える表現物のうち一点の絵に、日本軍「慰安婦」問題に関する2015年12月28日の日韓「合意」を否定する解説が付されたこと等とされていますが、今回の千葉市の決定には、以下に挙げる通り、いくつもの重大な問題点があると思います。
1.思想・信条の自由及び表現の自由の侵害であること
何人も、特定の属性を有する個人や集団に対する差別的動機に基づくものでない限り、思想・信条の自由及び表現の自由を侵害されてはなりません(日本国憲法19、21条)。今回の千葉市の決定は、日本軍「慰安婦」問題について自らの思いを書いた朝鮮学校生徒の思想・信条の自由の侵害であり、表現の自由の侵害であることは明らかです。
2.朝鮮学校への補助金不交付は、在日朝鮮人の子どもたちの教育権を侵害し、国際人権機関からは補助金の再開と維持が求められていること
2-1 在日朝鮮人は、日本が朝鮮を侵略・植民地支配したことを原因として日本に住んでおり、日本政府は植民地支配期に朝鮮人の民族教育を禁止・弾圧し、朝鮮人から言葉や文化、名前を奪いました。朝鮮の解放/日本の敗戦直後、在日朝鮮人は日本に奪われた朝鮮の言葉・文化・名前・アイデンティティを子どもたちに教えるため、自らの力で各地に「国語(朝鮮語)講習所」を建設し、それが現在の朝鮮学校のルーツとなっています。そもそも日本政府及び地方自治体は、朝鮮を植民地支配し、在日朝鮮人から朝鮮の言葉・文化・名前を奪ったことの責任及び原状回復義務に基づき、在日朝鮮人の民族教育を積極的に保障しなければなりません。地方自治体が朝鮮学校に補助金を支出することは、在日朝鮮人の民族教育保障の一環となります。
2-2 地方自治体が朝鮮学校への補助金を不交付とすることは、「在日朝鮮人の子どもたちの教育権を妨げる」ものであるとすでに国連・人種差別撤廃委員会から指摘され、同委員会からは地方自治体による補助金の再開や維持が勧告されています(2014年8月)。この勧告に反して補助金を停止した自治体はすなわち、人種差別撤廃条約に違反する行為を行ったことになります(人種差別撤廃条約2条、5条)。なお、日本政府が批准した国際人権条約は、日本政府のみならず地方自治体にも遵守義務があり、ゆえに地方自治体は同勧告も誠実に遵守しなければなりません。(日本国憲法98条2項)。
◆参考:人種差別撤廃委員会による総括所見(2014年)。当該勧告はパラグラフ19番目
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000060749.pdf
2-3 千葉県弁護士会も2016年8月に出した会長声明において、外交問題を理由に朝鮮学校の補助金を停止するのは、子どもたちの学習権侵害はもとより、憲法14条、世界人権宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)、子どもの権利に関する条約、人種差別撤廃条約が禁止する「不当な差別」にあたると指摘しています。
◆参考:千葉県弁護士会「朝鮮学校に対する補助金停止に反対する会長声明」
http://www.chiba-ben.or.jp/…/89f80068fd95b6d90cc7d6d7fb11c2…
3.日本軍「慰安婦」問題に関する日韓「合意」は政府間レベルのものであって、地方自治体の政策や市民の意見を縛るものではなく、なおかつ「合意」は被害者の声を反映していないなど多数の問題点を含んでおり、国際人権機関からも批判されていること
3-1 2015年12月28日に発表された日韓「合意」は、政府間レベルでなされたものであり、地方自治体の政策及び市民個人の表現が当該「合意」に縛られるものではまったくないことは明らかです。
3-2 そもそも当該「合意」は、①日本軍「慰安婦」制度の被害者の声をまったく反映していていないにもかかわらず、問題を封じ込めるような表現を使用していること、②正式な「合意」文書もなくその法的性格も不明確であること、③日本軍「慰安婦」制度が実施された当時の国内法や国際法に違反していたことに基づく日本政府の法的責任を認めていないこと、④国際人権法上の責務に基づく被害者の権利救済が満足になされていないこと、⑤再発防止措置が不在であることなどの重大な問題点を多数含んでいます。
3-3 当該「合意」は3-2で記したような問題点を孕んでいるため、2016年3月、国連・女性差別撤廃委員会は当該「合意」について「被害者中心のアプローチを十分に採用していない」と批判し、被害者に対する公式謝罪や損害賠償を含む十全で効果的な救済と被害回復措置の提供や、教科書への「慰安婦」問題の反映などを日本政府に対して勧告しています。
以上の理由から、千葉市が国際人権基準に従って朝鮮学校への補助金交付決定の取り消しを撤回し、補助金を支給することを強く求めます。
2017年5月1日
金優綺
※千葉市のウェブサイトから市長へ意見を送付できます。https://www.shinsei.elg-front.jp/chiba2/uketsuke/dform.do?acs=100tegami