ついに今年、証人尋問へ―愛知無償化裁判第23回口頭弁論
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昨日、愛知無償化裁判の第23回口頭弁論が名古屋地裁でありました。愛知朝鮮中高級学校の高級部2年生のほか、同胞、支援者ら151人が傍聴券を求めて列をなしました。今回、原告側弁護団は準備書面25、26、27を提出。法廷では中島万里弁護士が準備書面27の要旨を陳述しました。その他、次回以降の弁論に必要な手続きがなされました。
続いて報告集会へ。ここではまず、弁護団に新たに加わった2人の弁護士が紹介されました。吉田悟弁護士と青木有加弁護士です。
吉田弁護士は学生時代、仲の良かった在日朝鮮人から就職や進学の際に立ちはだかる「壁」について聞き驚いたということを話しながら、「今回、無償化の対象から朝鮮高校が外されると聞いて、歴史の時計の針を無理矢理戻すような憤りを感じた。少なからず力になれれば」と弁護団に加入した思いを話しました。
青木弁護士は、弁護団の金銘愛弁護士と司法修習生の時代から友人だったといいます。もともと差別や支配の問題について自分自身が行動して関わらなければいけないと思っていたところに金弁護士や弁護団の先生たちに声をかけられ、無償化裁判に携わることを決めたそう。「訴訟がかなり佳境を迎えていて自分にできることは限られているかもしれないが、弁護士という仕事の特性を生かして裁判に関わり、私の人生においても大事な行動としていけたらいいなと思っています」と意気込みをのべました。
続いて、裵明玉弁護士が今後の裁判の流れについて解説。愛知でもついに証人尋問の段階へ進むこと、弁護団から証人の申請をしたことなどが話されました。現在、証人尋問の期日は9月13日(水)の10時から17時までを予定しています。
弁護団はここに、原告である当時の愛知朝高生から3人のほか、山本かほり・愛知県立大学教授、成嶋隆・日本教育法学会理事長を証人として立たせる申請をしました。また、被告側からは下村博文・元文部科学大臣と文科省の官僚への尋問も申請。次回、第24回口頭弁論で、採用されるかどうかが決まるとのことでした。
次に、中島万里弁護士が準備書面27について解説しました。朝鮮学校を無償化制度から除外した国の行為は、平等権を定めた憲法14条に違反するという内容です。
中島弁護士は、「皆さんの素朴な思いとして、朝鮮学校だけが無償化制度から除外されて生徒たちに就学支援金が支給されていないことは不平等だ、不公平だというのがあると思います。今回提出した書面は、皆さんのそうした素朴な思いがベースになっています」と前置きし、解説を始めました。以下、概要をまとめます。
憲法14条1項には、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」と規定されています。差別感情にもとづいて朝鮮学校だけを排除するというのは当然違憲であり、その主張は準備書面17ですでにしています。国はそれに対して「差別ではない」という反論をしているため、この準備書面27ではさらに踏み込んで、仮に国に差別目的がなく、別の目的で朝鮮学校を排除したのだとしても憲法14条1項に違反しているという主張をしました。
憲法14条には、ある対象を他の対象と「区別」するのであれば、それが合理的な区別でなくてはならないという趣旨が込められています。
「合理的」か「不合理」かを判断するには、区別した目的や方法に不自然な点や無理がないかということを様々な証拠や条件から見る必要があります。弁護団は、朝鮮学校の生徒のみを排除した過程を分析的に分けていくと4つの過程があり、それぞれに不合理な点があると指摘しました。
4つの過程とは、▼就学支援金を支給するに値するかどうかの審査申請を愛知朝鮮学園がしたにも関わらず、実質的に審査を開始しなかったこと、▼期間を必要以上に引き延ばし、審査を遅延させたこと、▼朝鮮学校が就学支援金の支給を受けるために必要な根拠となる省令ハを削除したこと、▼朝鮮学校に就学支援金を支給しない決定を下したこと(不指定処分)―です。
まず、審査を開始せずに止めていたという点。国はその目的について、「審査会のメンバーが延坪島事件の発生で報道や世論に影響され、公正な審査を行わない懸念があるため」と説明しています。しかし、無償化法の関連法令ではそもそも不公正な審査が行われないようにする仕組みを設けているため、審査を止める必要がなかったと弁護団は主張しました。よってこの点では、審査を止めた目的の面からも審査を止めたという手段の面からも、国の行為は不合理だったと強調。他の3点も、同じように目的と手段において被告側の不合理な点が論理的に暴かれていきました。
省令ㇵの削除の点では、国はハを削除した当時、「ハに基づいて支給を求めている学校がなかった」という旨の発言をしていたことが分かりました。朝鮮学校は一貫して就学支援金の支給を申請しているので、明らかな虚偽となります。他にも、省令の内容に欠陥があったというような理由をのべていますが、事実関係を調べると発言に矛盾があります。万が一、欠陥があったとしても省令ㇵを改定すれば解決するのでは。削除はどう見ても過剰な手段であり、やはり国のいう目的、手段いずれも不合理だと一刀両断されました。
中島弁護士は最後に、「当時の政治家は明らかに、政治目的で朝鮮学校を排除するということを言っていた。訴訟になってから、国は一生懸命それを取り繕って排除を正当化しようとしていますが、その内容にはすでに無理があり、破たんしています」と厳しく話していました。
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裁判に何度も足を運んで、いつもなるほどなと頷かされています。今回は国側の逃げ道をさらに塞ぐ、とても力強い書面だったと感じました。
報告が終わった後、朝鮮高校にも差別なく無償化適用を求めるネットワーク愛知の事務局から、『トトリ通信』の宣伝がありました。無償化裁判に関する「今さら聞けないQ&A」など、現在の状況がよく分かる内容がまとめられています。これはHPでも閲覧することができるので、ぜひご覧になってみて下さい。
トトリ通信→http://mushouka.aichi.jp/totori
次回、第24回口頭弁論は7月12日(水)14:00から名古屋地裁であります。傍聴するための抽選券は13:30に配布締切です。この日は愛知中高が試験期間に入るため、たくさんの人へ呼びかけをしているそうです。お近くの方はぜひご参加を! 証人尋問がどうなるかの結果、また裁判官が朝鮮学校に検証に訪れるか否かの決定もこの日に分かります。(理)