次回9月、証人尋問予定/九州無償化裁判第13回口頭弁論
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九州無償化裁判第13回口頭弁論が5月25日、福岡地裁小倉支部で開かれた。
42の傍聴券を求め、裁判所には126人が集まった。
前回の裁判から右陪席(傍聴席から向かって左側)の裁判官が交代したことに伴い、今回の法廷では改めて原告本人の意見陳述が行われた。
提訴時は九州朝鮮高校の生徒であり現在は県内の朝鮮学校で教員をしている原告の1人が、在学当時の経験や朝鮮学校への思いなどをのべた。
今回、原告(朝鮮学園)は被告(国)の第8準備書面に反論する第21準備書面を提出し、弁護団を代表して清田美喜弁護士が書面の要旨を法廷で陳述した。
清田弁護士は、九州朝鮮高校の不指定処分や規則ハ号の削除は、就学支援金を申請したのが朝鮮学校であるがゆえの結論ありきの処分であり、いずれも後付けにすぎないとし、被告が繰り返す主張に再度反論した。
さらに、朝鮮高校生徒たちにとって高校無償化が適用されることは、日本の学生と同じように自分たちの学ぶ意欲も日本国がサポートしてくれるという自信と励ましになるが、逆にそれが自分たちだけに支払われないということは、生徒たちに「あなたたちは朝鮮学校に通っているから、在日朝鮮人だから、他の日本の学生と同じように就学支援金を受け取ることはできない」といったメッセージを発するものとなると強調した。
「アイデンティティとは、人が何ゆえに自分を自分であると思うかということであり、原告らにとってはその答えの一つが、自分は在日朝鮮人であるということです。 … その原告たちを在日朝鮮人であるがゆえに差別すること、朝鮮学校を差別することは、原告たちが『これが自分だ』と思っているまさにその部分を否定し、傷付けるものです」
また、文部科学省の「初等中等教育局財務課高校修学支援室」が高校無償化法に関連し各朝鮮高校への調査を行っていることから、原告は無償化法制定から朝鮮高校除外に至るまでの事情について同支援室室長への尋問実施を求める求釈明申立書を提出した。
申立書では、▼2009年8月30日の衆議院総選挙以降から朝鮮高校が不指定処分となった2013年2月20日までの同室長名と在任期間、▼2012年12月26日の自民党政権発足直後に文科省の担当者が、朝鮮高校の指定・不指定に関して下村文部科学大臣に説明した際に用いた資料の開示、▼修学支援室長が交代する際に作成されているはずの引継ぎ文書の開示などを要求した。
これに対し被告は、回答書3を通して修学支援室長の名簿と在任期間については答えたが、下村文科大臣への説明で使われた資料に関してはうやむやな回答に留まった。また室長交代時の引継ぎ文書については回答がなかった。
これらの資料の開示については、原告弁護団が改めて必要性などを文書で提出し、国が回答することとなった。
法廷終了後、裁判所の別室で原告・被告の代理人と裁判所による進行協議が行われ、今後の裁判の進行について話し合われた。
この裁判を主な担当が、左陪席から右陪席の裁判官(今回新たに加わった裁判官)に代わったことなどもここで報告された。原告側は、裁判官に何度も要求している朝鮮高校への訪問についても、もう一度アピールした。
その後の裁判報告会では、弁護団事務局長の金敏寛弁護士がこの日の裁判手続きや各地裁判の状況、今後の流れについて説明した。
安元隆治弁護士は、修学支援室に関する求釈明申立書について補足し、「他地域に比べて裁判の進行が遅いが、民事訴訟では控訴審になると新たな事実の主張や証拠の提出が難しくなるため、今の段階でできる限りのことをやっておくことが後の真相解明においても非常に重要だ」と話した。
次回の第14回口頭弁論は、9月14日(木)14時から行われる。
その間、双方の代理人と裁判所で進行協議を行い、最終段階となる証人尋問をどのように行うか、具体的に検討される予定だ。(S)