辺野古ゲート前で毎日繰り返されていること
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6月19日、沖縄では梅雨が続いていたが、この日は特に激しい雨が降った。
名護市の辺野古新基地建設に反対するゲート前座り込み活動の場を初めて訪ねた。
那覇市の県庁前から辺野古間を日曜日を除いて毎日往復している「辺野古バス」を利用した。自分を入れて、バスに乗っていたのは21人。到着するとすでに各地からも人が集まり工事用ゲートの前で座り込みをしていた。
ニュースではほんの一部しか報道されない。ドキュメンタリー映画やフェイスブックの個人投稿などでそのようすがリアルに伝えられるが、それでも、現地の空気は現地でしか感じられない。この日辺野古に来てみて感じたことだ。
早朝から午後にかけて1日3回、埋め立てに使われる土砂や砂利を積んだトラック数十台が米軍基地内に入っていく。その度に、沖縄県警の機動隊が出動し、座り込む人たちを「道路交通法違反」と言って強制排除し、ゲートを開ける。連れて行かれた人たちは、すぐ隣の警察車両で囲ったスペースに拘束されて、トラックが基地内に入っていくのを見ていることしかできない。これが1日3回、毎日繰り返される…。
この日はすべての工事車両がゲート内に入っていったが、水、木、土曜日は集中行動日でさらに多くの参加者でゲート前が埋まり、機動隊が座り込み参加者を排除しきれないこともある。そうして工事車両が入るのを阻止できる日もあるそうだ。
参加者の1人が若い機動隊員たちに、「君たちは沖縄戦の生き残りの子孫なんだぞ。分かってるだろ?」と繰り返している。機動隊員は答えないが、その表情をどう理解したらいいのか分からなかった。冷酷な表情にも見えるし、悲しい表情にも見える。
そんな沖縄の人同士の衝突が毎日のように繰り返されているのだが、ふと目線をそらすと、道路のど真ん中を米軍たちがジョギングしながら通り過ぎて行く。この変な構図を一体誰が作り出しているのだろう。ただただ、悲しいだけだった。
選挙で基地反対の民意が示されても、現実はこの状態。それでも参加者たちの心が折れる気配はない。口をそろえるのは、座り込みをする背景に、沖縄戦の経験、その後72年間絶えることのない基地との闘いの経験があるということだ。
一緒にバスに乗っていた76歳の女性は沖縄戦で両親を失った。長い間そのことを周囲に言うことなく過ごしてきたが、辺野古に通うようになって自ら話すようになったという。
沖縄の基地問題に関しては、ネット上でも心無い言葉が飛び交い、嘘が本当のように出回っている。色々なカラクリで、まるで「沖縄の話」になっている。
この日、現地の本当のようすを日本全国に発信しようとやってきた人もいた。「誰も伝えないから、自分が伝えるしかない」。
アメリカと日本政府が推し進める日米安保強化の末端で、毎日繰り広げられている光景、基地問題の本質が掻き消される現実に恐怖を感じる。同時に、そこに座り込む人たちの揺るがない根拠に心を打たれた。(S)