見知らぬ土地でひとり飯を食うということ
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テレビ東京で毎週金曜深夜に放送している『孤独のグルメ』というドラマをご存知だろうか。個人で輸入雑貨商を営む井之頭五郎は商用でさまざまな街を訪れるのだが、仕事終わりにふと立ち寄った店でひとり食事をする―。画面に映し出されるのは、五郎がひたすらおいしそうに飯を食うシーン。ストーリーがとくにあるわけでもない、セリフもほとんどが五郎のモノローグ。こんな番組のどこが面白いのか、と思う向きもあるだろうが、これがハマるのだ。2012年に放送が始まり、今年の4月からシーズン6が放送中だが、ほぼ毎シリーズ視聴している。
五郎が食事をする店は実在の店だ。ドラマで登場する食べ物がおいしそうだという理由もあるが、腹をすかせた主人公が、誰に気兼ねすることなく、欲望のおもむくまま、自分が食べたいものをひたすら食べるという、ある種の「気持ちよさ」「潔さ」が人気の秘密なのではないかと個人的には思っている。
私も仕事柄、見知らぬ土地を訪れることが多い。取材相手や取材協力者らと連れ立って食事に行くこともあるが、このドラマのように、ひと仕事を終えてひとりになり、「さあ、昼飯どうしようか」というシチュエーションも少なくない(いや、むしろこっちのほうが多いかもしれない)。
知らない土地で飲食店に入って食事をしようという時、みなさんならどうするだろうか。どうせならおいしいものを食べたいとなった場合、「食べログ」などのグルメサイトを見て、評価の高い店に、などが最近のポピュラーな店選びの方法だろうか。その土地の人間に聞くのが一番いいという声も多い。
私は、時間があまりない場合だと、店選びの手間を省くために、すでに知っている全国チェーン店やファストフードを利用することが多々ある。スケジュールに余裕があれば、事前情報なしで自らの直感を頼りにふらっと店に入る。別にとびきりおいしい食事を求めているわけではない。知らない店に入る時のドキドキ感(それが初めて訪れる土地ならなおさらだ)を味わいたい、せっかくのひとりきりの食事タイムなら思いきり自分勝手にふるまいたい、そんなことを考えている。(相)