関東大震災朝鮮人虐殺、荒川河川敷でも追悼式
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9月2日には、東京・荒川河川敷の木根川橋下手でも「関東大震災94周年 韓国・朝鮮人犠牲者追悼式」が開かれた。
今年で36回目。主催するのは、一般社団法人「ほうせんか」と、「関東大震災時に虐殺された朝鮮人の遺骨を発掘し追悼する会」(追悼する会)だ。
これまで市民の力で証言収集などの取り組みが続けられ、土手下の私有地には2009年に「関東大震災時 韓国・朝鮮人殉難者追悼之碑」が建てられた。
追悼碑には、追悼式前から多くの人が参列し手を合わせていた。
今年は日本市民、在日同胞、中国人犠牲者の遺族など、例年より多い270人以上が参加。
「ほうせんか」の理事、西崎雅夫さんはあいさつでこれまでの活動経緯や、遺骨を捜す韓国の遺族の話に触れ、参加者たちにこう訴える。
「遺族にとってこの事件はまだ終わっていないのです。終われないのです。私たちの活動もまた、日本社会が豊かな多文化共生社会となるその日まで終わることがあってはならないのでしょう。まだまだ先は長そうです」
式で配られたパンフレットには、事件を体験した愼昌範さんの証言が紹介され、その遺族にあたる愼蒼宇さん(法政大学准教授)があいさつ立った。
証言に記されている、当時総督府が重傷者に放ったという「この度の事は、天災と思ってあきらめるように」という言葉を、小池百合子東京都知事の一連の発言と重ねる愼さん。
「人災である関東大震災の朝鮮人虐殺を、天災の中に封じ込めてしまおうとする動きが見て取れるが、事件当時も政府役員によってこのようなことが言われていた」と、悲しい表情を見せた。
また、参加していた中国人犠牲者の遺族もあいさつを行った。
「追悼する会」からは、横網公演で行われた追悼式への追悼文を取りやめた小池都知事に手紙が送られた。
そこでは、都知事の行動が犠牲者を再びおとしめ、韓国・朝鮮人を敵視する人を力づけてしまったとして、差別扇動を防ぐ都知事の責任を強調した。
式では追悼の歌やプンムルノリが奏でられ、参加者たちは犠牲者らに思いを馳せた。
関東大震災の追悼碑について研究している在日コリアンの大学院生は、明るく振舞いながらも、「行政がこの事実を否定することによって、私たちが声をあげる基盤が奪われている」と懸念していた。
チョゴリを着た幼い子どもたちを連れて参加した韓国出身の夫婦の姿も。差別が一般市民の間でも正当化され、子どもへのいじめなどが起きないか心配していた。
顕著化する歴史修正主義、今につながるヘイトクライムや国の朝鮮学校差別。
それらへの危機感が、追悼式の場でもひしひしと伝わった。
同時にそれは、問題に向き合い、共生の実現への信念をもって活動を続ける人々の、変わらない姿でもあった。
そこに希望が見えるようだった。(S)