柳美里さんの新刊「国家への道順」
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2010年1月号から2017年1月号まで、7年にわたり月刊イオで連載した柳美里さんの「ポドゥナムの里から」が、1冊の本となりました。タイトルは「国家への道順」(河出書房新社、1350円+税)です。
さっそく読みましたが連載していたときと、印象が大きく違っています。本にするに当たり、大きく加筆、修正されたのだと思います。本のタイトルが非常に刺激的です。朝鮮半島にルーツをもつ柳さんが、日本という国と向き合って(格闘して)、紡ぎだされた言葉が躍動しています。
「はじめに」に次のような文章があります。海外に出て日本に向かう時の心情で、
〈「自分の国へ帰る」「帰国」ではないので、「日本に戻ります」と言ってみたり、「帰着しました」と言ってみたりしていますが、どの言葉もしっくりきません。〉
私自身も同じような思いにとらわれます。海外にほとんど出たことがなく、日本を離れる場合の多くは朝鮮に行くときなので、特にそうです。
今の日本政府の「北朝鮮」政策は恐怖をあおり対立を激化させることだけで、対話をしようとはまったく考えていません。それがどれだけ愚かなことなのか、この本を読むとよくわかります。柳さんは「おわりに」で「わたしは、対話を、求めます」と訴えます。
本の表紙のオビの言葉がまた、刺激的です。
〈わたしは「日本人」に問います。「あなたは自分が何を考え、何をしているのか、解っていますか?」〉
月刊イオからできた本です。ぜひ、ご購入ください。(k)