総選挙後、初の院内集会「人種差別撤廃基本法の実現を!」
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「人種差別撤廃基本法の実現を!」が11月2日、東京・永田町の参議院議員会館で行われ、社民党、立憲民主党、共産党をはじめとする衆参両院の国会議員、人権活動家らが集まった。16年6月に施行されたヘイトスピーチ(HS)解消法は日本政府がHSの害悪を認め、反差別の立場に立った反差別法整備の出発点だったが、HSは依然として行われ、マイノリティの人権侵害は続いている。
「HS解消法の実効化を検証する」と題して発言した師岡康子弁護士は、「実効化の現段階」について、裁判所、法務省、警察・検察などに分類して述べて報告。
法制定後に、国として初めてHS実態調査や外国籍住民アンケートが行われた結果、差別の実態が明らかになったことや、地方レベルでは、愛知県、東京都江戸川区で施設利用規約の条項が改正され、川崎市では今月中にもガイドラインが発表されるなど、進む実効化の動きを伝えた。
一方、師岡弁護士は「解消法の影響を及ぼせていない」問題点として、公人の暴言が加速していると指摘。とくに麻生副総理の「武装難民発言」について、「麻生副総理の発言は、在日コリアンを敵視し、差別を扇動するものだ。今後は、選挙活動の中でHSが許されないという啓発活動を求めていきたい」と警鐘を鳴らした。さらに今後は、人種差別撤廃基本法の制定に向けた取り組みを加速させるべきだとし、「各省庁への要請をさらに具体化し、法を生かし実効化していこう。地方では禁止条項を作り、止められるものを止めていこう」「2020年のオリンピック・パラリンピックまでに国際人権基準の求める法制度を実現しよう」と呼びかけた。
続いてハン・トンヒョン日本映画大学教員が「インターネット上におけるヘイトスピーチの状況から」とのテーマでネット上の深刻な被害について報告した。
ハン教員は、朝鮮学校への就学支援金の適用を求めた全国の弁護士会に対し、弁護士会長らの懲戒を求める文書が殺到したり、「在留管理制度の変更により、在日コリアンは不法滞在者となり、強制送還される」といったデマが拡散したことなど、外国人の生活圏を脅かす攻撃が激しさを増していると指摘。メディア各社がルールを明確化し、フェイクニュース対策を講じるなど、社会全体として問題解決を図っていくことや、自らも攻撃を受けている国会議員が議員連盟を結成することも提案した。
また、「法務省の外国人住民調査からみる差別」と題して報告した鈴木江理子・国士館大学教員は、「子どもの教育については、学校や名前や国籍を理由にからかわれたり、いじめに遭わないかを心配している人が3割を占めた。調査結果は、日本語能力や滞在年数に関わらず、変えられない属性によって外国人が差別を受けている現実を示している。差別体験をホスト社会に対して伝えることができない状況が外国人の心により深い傷を与え、ホスト社会の無知・無関心を増幅している」と問題提起した。
集会のなかで、ハン教員が「法務省の外国人住民調査を通じて、差別の存在が明らかになったにも関わらず、日本政府は国連人権理事会の対日人権審査に向けて提出した報告書で『日本でそれほどの人種差別の扇動が行われている状況とは考えていない』と答えている」と、国の発言の「矛盾」を指摘していたことが印象的だった。
日本政府は、これからも国際の人権基準を前に、「二枚舌」を使うのだろうか。2020年の東京五輪まで「人権大国・日」本を目指すという日本。ヘイトスピーチはネットのフェイクニュースから生まれていることを考えると、社会をあげてこれを根絶することが必要だと痛感した。
ヘイトスピーチ解消法の成立は出発点に過ぎず、人種差別撤廃基本法の制定が求められている。
ここで週末のイベント紹介を。秋は交流祭の季節。
各地の朝高で楽しい交流祭が開かれます。11月11日、神奈川朝鮮初中高級学校では、日本の高校生とのライブやしゃべり場が予定されています。
東京朝鮮中高級学校でも18、19日に学校が公開され、日本の先生による授業が行われます。興味のある方、ぜひ足を運んでみてください。(瑛)